グラフェン閉殻構造ナノ粒子であるカーボンオニオンの超精密ポリシング作用を検証することを目的に,単結晶SiCおよび石英ガラスを工作物として,自公転平行平板型超精密研磨盤とカーボンオニオンスラリーを用いたポリシング実験を行った.その結果,スクラッチフリーの最大高さ1nm以下の平滑面が生成されることが確認され,カーボンオニオン粒子が超精密ポリシング作用を有するとともに,単結晶SiCに匹敵する機械的強度を有することが示唆された. また,グラフェン閉殻構造ナノ粒子の機械的特性を評価するため,ダイヤモンド製圧子を取り付けたプローブ顕微鏡複合型ナノインデンテーション装置により,独立粒子の圧縮破壊試験を試みた.平滑に研磨したダイヤモンド基板上に配置したカーボンオニオン粒子の位置を圧子の走査により特定し,圧縮した.その結果,独立粒子の圧縮挙動とみられる荷重-変位曲線が取得できた.この荷重と圧子の変位との関係から,カーボンオニオンナノ粒子は粒径が小さいほど圧縮変形率が高く,圧縮強度に優れる可能性があることが明らかになった. さらに,カーボンオニオンの超精密ポリシング作用の基礎的特性を検討するため,カーボンオニオン粒子の純水中での分散性がポリシング作用に与える影響について調べた.超音波加振および過酸化水素水による表面処理を行ったが,分散性の違いによる到達表面あらさに大きな違いは見られなかった.また,スラリーの濃度の上昇がポリシング速度を増加させることがわかった. 以上の結果と,グラファイト粒子では単結晶SiCの表面除去はなされないことから,カーボンオニオンの超精密ポリシングメカニズムとして,表面除去は物理的作用であり,グラフェンシートが球殻状に閉じた構造となることでカーボンオニオンは粒子としての強度を増し,その擦過作用によりポリシング機能を発揮することが示唆された.
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