研究実績の概要 |
一般に,ボルトやリベットに代表される接合は,複合材料に適用した場合に穴を開ける際に繊維を破断してしまうため,破壊の起点となり強度が低下する. 炭素繊維が電磁誘導により加熱されることに着目し,高周波誘導加熱を用いた炭素繊維強化熱可塑性プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastics:以下CFRTP)と金属の接合技術について,繊維の損傷を低減させて接合する方法を検討した. まず,購入した高周波誘導加熱装置を用いてCFRTPを成形可能温度まで加熱し,剣山状に加工を施したアルミニウム板を圧着し,アンカー効果によって機械的に接合する. 高周波誘導加熱によるCFRTPシートの到達温度は層数に影響されることがわかった.本実験で使用する電源とコイルでは,マトリクスであるPMMAの成形温度(150~200℃)まで上げるには5層必要であった.試験片は重ね合わせ継手であり,剣山状アンカーの加工時に生じる向きによって試験片を分類した.アンカーの向きを正負として,引張試験により接合強度と向きについて検討を行った.それぞれの試験片の引張試験結果をから,試験後の試験片は正負ともに,アルミニウム板のアンカー加工された外周部で破断した.この時の試験力を用いて接合強度を求めると正方向で最大48MPa,負方向で最大67MPaと差がみられた.これは破断部の引張に寄与する断面積が,負方向の時のほうが大きくなるためと考えられる.CFRTPのマトリクスであるPMMAとの接合も行ったところ,正負ともに全てPMMAの破断となり,接合強度は最大45MPaであった.今回の試験では接合界面での破断ではないため,正確な接合強度は得られていないが,PMMAとアルミニウムの界面の接合強度以上の値が得られているため,アルミニウムもしくはカーボンファイバーを強度に関与させることができたと考えられる.
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