平成27年度においては光学顕微鏡による三次元計測において,高さ(深さ)の情報を得るために低コヒーレンス干渉の特徴であるコヒーレンスゲーティングに着目して研究開発を行った.OCT(Optical Coherence Tomography)はコヒーレンスゲーティングを利用して位相物体の断層像を得る技術であり,網膜計測に実用化されている.本研究では,反射型OCTと光学顕微鏡を組み合わせ,対象の表面形状を高速に三次元計測することを提案した.しかし,光学顕微鏡の被写界深度は狭く,高さ(深さ)測定範囲はミリメートル程度に限定される.そこで,試料走査型OCT顕微鏡を提案した.これは画像処理に基づいて参照ミラーを制御し,低コヒーレンス干渉信号を光学顕微鏡の被写界深度内に固定した上で,測定対象である試料を走査することで三次元形状を得る方法である.実験による検証の結果,提案手法により,光学顕微鏡の被写界深度の数十倍の高さ(深さ)測定範囲が得られた.原理的には対物レンズの作動距離(被写界深度の数千倍)まで測定範囲を拡大可能であるが,長い走査においては干渉信号においてノイズの他に直流成分の歪みが多く発生する.この問題を解決するためには,信号処理技術を組み込んで三次元計測のアルゴリズムを改良する必要があるが,基本原理は検証した.
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