研究課題/領域番号 |
25420052
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
太田 稔 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (60504256)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ラピッドローテーション研削 / ダイヤモンド / 高速定圧研削 / 高能率研削 / 研削熱 / 表面品位 |
研究実績の概要 |
本研究では、多結晶ダイヤモンド(以下、PCDと呼ぶ)の高温軟化特性と超高速研削による研削抵抗低減の相乗効果を利用した『高温軟化促進研削法』によって、ダイヤモンドの加工能率を飛躍的に増大することを目的としている。 平成25年度では、高速定圧研削装置を開発し、PCDの高速定圧研削実験を実施した。その結果、砥石周速度を増大すると、加工能率の向上とともに表面粗さも改善できるという現象を発見でき、提案した研削法のコンセプトを実証できた。 そこで平成26年度では、より詳細な研削現象の解明と高能率な研削条件の探索を目的として、研削温度の解析および研削実験を行った。実験をより効率的に行うため、PCDの高速定圧研削を優先し、ラピッドローテーション研削(以下、RRGと呼ぶ)については、焼入れ鋼を用いた予備実験で基本的な研削特性を把握した。まず、ダイヤモンドホイール(以下、ホイールと呼ぶ)のボンド材種が研削温度に及ぼす影響について高速定圧研削実験を行うとともに、このときの研削温度について有限要素法による研削温度の解析を試みた。その結果、メタルボンドホイールよりビトリファイドボンドホイールを用いた場合の方が高能率に研削できることが分かった。その原因として研削温度が大きく影響していることが判明した。次に、焼入れ鋼を対象にしてRRGにおける研削温度の解析および研削実験を行った。この結果、RRGによれば工作物の熱影響層が浅くなり、極表層部のみに研削熱が集中し、工作物の熱影響層が小さくなることが明らかになった。以上の結果から、PCD表面の研削温度を増大させ高温軟化を促進する条件として、熱伝導率の小さいホイールを用い、砥石周速度を高速化することが有効であることが判明した。さらに、RRGによって工作物表層部のみに研削熱が集中する効果を利用して、高品位かつ高能率にPCDを研削できる可能性を実証できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度で、メタルボンドホイールによる高速定圧研削実験により、砥石周速度を高速化することで、PCDの表面温度が高くなり高温軟化が促進される可能性を実証できた。また、同時に表面粗さも改善されるという特異な現象を発見でき、PCDの高品位高能率研削の可能性を見出すことができた。平成26年度では、熱伝導率の小さなホイールを用いることによって、さらなる高能率研削が可能であることや連続ドレッシングの効果を明らかにした。以上により、『高温軟化促進研削法』のコンセプトを実証するとともに、そのコンセプトを実現するための具体的な加工条件について、研削温度の解析および研削実験を通して明らかにしてきた。さらに、加工能率と表面粗さを同時に改善できる新たな研削法として、本研削法の有効性を実証できた。 以上の結果から、本研究課題の最大のポイントであるダイヤモンドの特性を利用した『高温軟化促進研削法』のコンセプトの実証および基礎的な研削現象の解明について、ほぼ計画通り達成できたと考えている。また、これまでの実験・解析によって、砥石周速度の高速化や連続ドレッシングの適用など加工能率の飛躍的な増大を目指すための具体的な加工条件について方向性を示すことができた。特に、連続ドレッシングの効果については、計画を前倒しして達成できた。さらに、高速研削による加工能率と表面粗さの両立およびRRGによる表面性状の改善効果などの新たな加工現象を発見できたことも大きな成果と考えられる。一方で、最適な砥石周速度の範囲を調査するために必要な超高速研削用ホイールの開発およびPCDの研削に有効と考えられる導電性ホイールの開発については、さらなる加速が必要と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は最終年度として、ダイヤモンドの『高温軟化促進研削法』により従来にない高いレベルで高能率研削を実現することを目的とする。さらに、新たな効果として、加工能率と同時に表面粗さなどの表面品位を改善する画期的な研削法としての可能性を実証することを目的に付け加えて研究を進めたい。 そのために、超高速研削用ホイールおよび導電性ホイールの開発が不可欠であり、砥石メーカーとの連携体制をより強化して研究を進めて行く。まず、超高速研削用ホイールを開発し、開発したホイールを用いて従来にない超高速領域でのPCDの研削実験を行い、最適砥石周速度の領域を把握する。また、導電性を付与した超高速研削用ホイールを開発し、PCDの高速放電複合研削実験を行う。これらの実験については、研削特性を把握しやすい定圧研削実験装置で行うことによって効率的に実験を進める。 さらには、RRGによるPCDの高能率研削を実現するために、PCDを円筒外周面に固定した工作物を準備して、PCDの円筒外周面研削という新たな研削手法を試みる。そのために、高速定圧研削実験を通して得られた成果を外周研削用ホイールの仕様にフィードバックしてRRG用ダイヤモンドホイールを製作し、開発したホイールを用いて、RRGによる高能率研削を実現する。これらの研削実験と並行して、有限要素法よる砥石温度と工作物温度の解析を行い、解析と研削実験結果からPCDの『高温軟化促進研削法』による高品位高能率研削の加工現象を明らかにする。
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