本研究を通じて明らかになったことを次にまとめる. 1.樹脂3Dプリンターを使用して,一品ずつ形状の異なった義歯型を製造することは容易である.また,この型を薄肉のシェル型とすることで,粉末充填(成形)後の型除去等が容易になる.2.前述の樹脂型に,高速遠心成形法によりセラミックス粉末を高密度に充填することが出来る.この時,型の内外に泥漿を浸漬する「埋設成形」法を使用することで,型の変形や破壊を防ぐことが出来る.3.樹脂シェル型は成形体の乾燥後に機械的に取り除くことが出来る.樹脂の熱分解により除去することも出来るが,この場合,樹脂からの揮発成分の影響でセラミックスの焼結特性に障害が出る.4.正常に焼結が行えた場合,アルミナ性,ジルコニア性の義歯の両者とも,焼結密度99%の均質な焼結体を得ることが出来る. ただし,下記の問題点が残されたので,今後も継続して研究を行う必要がある. 1.義歯形状が複雑になると,成形体の乾燥後にクラックが生じる.これは,成形体の乾燥収縮のためであると考えられる.2.樹脂の熱分解によるストレスフリーの離型が好ましいので,樹脂の中から焼結性を阻害するコンタミ成分を除去する必要がある.3.樹脂シェル型は,全体としては十分な寸法精度を持っているが,表面粗さ(造形時のステップ状の段差)が大きく,現状では義歯として使えるだけのなめらかさに至らない. ゆえに,今後とも本研究を継続して,本技術の完成を目指す所存である.
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