研究課題/領域番号 |
25420056
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
吉村 英徳 香川大学, 工学部, 准教授 (30314412)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ポーラス金属材料 / 成形限界予測 / ロータリープレス / 中空金属球成形体 / 圧縮試験 / 曲げ試験 |
研究概要 |
自動車燃費向上および二酸化炭素排出量削減のため,車体の軽量化と比剛性・比衝突エネルギー吸収性の向上を可能にするポーラス金属の新材料を開発する.既開発済みのものに対して,ピラー・バンパー等の曲げ吸収部材にも適用でき,かつ,プレス加工により安価に大量生産できる新しい中空金属球成形体の製造技術開発および成形体の試作・機械的特性の評価を行うものである.中空金属球がボールチェーン状に連なったものを積層固化成形して材料とする.H25年度は,ボールチェーン状中空金属球の製造方法について,研究計画に記載した2個のサブテーマに取り組んだ. 1個目のサブテーマである第1工程のせん断加工の基礎的検討については,主せん断ひずみエネルギーに注目した板材の成形限界の予測式を提案し,純アルミの板材を試験材として,平頭絞り試験を実施して,その適用可能性を調査した.その結果,従来破壊条件式に比べ,非比例や非面内のひずみ経路に対しても,約15%以下と精度良く予測できる結果を得た.今後は成形限界に追加して破断予測式を開発する予定であるが,その準備として,材料内のボイド(体積欠陥)率が体積ひずみに与える影響を調べるため,FEM解析を行った.現在は,その計算結果から静水圧応力依存を考慮した式(成形限界予測式に追加する項)を構築中である. 2個目のサブテーマである第2工程の絞り加工については,ロータリープレスのFEM解析を行い,装置および試験片形状のおおよその設計を済ませ,装置を試作した.この装置による試作は,装置や試験片サイズなどを調整しながら,H26年度に実施する予定である.一方,JST A-step探索型と合わせて,従来の順送りプレス法によるボールチェーン状中空金属球の試作が終わり,圧縮試験および曲げ試験を行って,機械的特性の評価まで終わった.既開発の鈴型中空球成形体よりも曲げ強度は向上した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
軽量かつ高比剛性,高衝撃吸収性を有する新超軽量ポーラス金属材料として,ボールチェーン状中空金属球成形体の開発を行い,順送りプレスにて試作・機械的特性試験も行った.この試作・性能評価については,研究計画に記載した項目はすべて終了したが,積層方法についての研究計画が不足していることが分かり,現在H26年度計画に追加して実施しているところである.この結果が得られれば,所定の性能が得られると考えている.ただし,曲げの吸収性については既開発の鈴型中空球成形体よりも性能が高かったため,既に10月に特許申請を行っている. 第1工程の解析的検討で必要となる成形限界予測については,当面は他研究者による従来の予測式を使用して実施する予定であったが,実験による予測精度の結果が期待以上であり,アドバイザーの他大学研究者との打合せで高評価が得られたので,H26年度秋の日本塑性加工学会連合講演会にて発表を申し込める成果が出たと考えている.H26年度は破断予測式までを構築し,打抜き工程の解析を実現することから,計画通りに遂行し,成形限界予測式が提案できるまで得られたことから計画以上の成果が得られたと考えている. その結果,10月に特許申請を行うことができた. 第2工程のロータリープレスによる絞り工程の検討であるが,FEM解析により設計を済ませ,装置の試作まで行った.研究計画については解析的に検討は終了し,実験による検証は現在実施中である.実験については,試作しながらの装置や試験片の微調整となり,研究計画ではH26年度にかけての検討項目のため,おおよそ計画通りに遂行していると言える. 以上,おおよそ研究計画通りであり,一部は計画以上の成果が得られた.
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今後の研究の推進方策 |
新材料の試作品の性能不足が見つかり,研究計画外であるボールチェーン状中空金属球の積層方法の検討が追加項目となった.これについては,試験片を大量に製造し,成形体を試作して,圧縮および曲げ試験を実施する.性能が目標値を達成するよう,各所を見直す.それ以外については,H26年度計画通りに遂行する予定で,取り立てて課題はないと考えている.ただし,一番の問題は中空金属球の大量生産であり,現在はロールの一部しかパンチ・ダイスを作ることができず,あくまで小さな試験片での試作となっている.完全なロータリープレスの試作には,研究費を必要とするため,別のファンドの申請を行うよう努力する.
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次年度の研究費の使用計画 |
装置の外注・試作は終了したが,その後の試験の板材や調整用部品(消耗品)の購入において,発注が年度末となり,納期がH26年度4月頃となった.H26年度も継続(2年目)であったため,会計係よりH26年度の使用に変更を求められたため,繰越とした. 既に,一部は消耗品が納入され,現在試験片の試作を実施しているところである.H26年度は,ロータリープレスの他工程の検討を行うため,当初予定の研究計画を実施するには,計画通りの使用額が必要であり,繰り越したものとは別途の使用用途である.
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