本研究は複数のカンチレバー式変位計を一体としたMEMSデバイスを開発し,それを用いて高精度平面の真直形状計測ならびに平面形状計測を実現を目指すものである. 平成27年度はデバイスの感度を向上させるための構造を有限要素法解析により検討した.同一変位に対し検出部により大きなひずみが生じるよう,意図的に応力集中を生じさせるためにカンチレバー根元部に付加した切欠きの形状と寸法,および溝加工の位置とサイズの組み合わせを変えて検討を行った結果,従来の単純な構造に比べ感度のみ重視した場合では5倍以上の向上が見込める見通しを得た.それに加え,複数のカンチレバー変位計間での相互干渉についても検討を行った.従来の構造では変位を加えていない隣接するひずみ検出部にも20%近くのひずみが伝搬し,測定誤差の原因となる恐れがあったが,カンチレバー間のベース部に切欠きを入れることでそれを1%以下に低減できることを示した. データ処理面では,平面度測定用5点法変位計デバイスの構造にあわせたプログラムを作成した.このデバイスの構造上,隣接する測定ライン間で測定ピッチは同じものの,位置は半ピッチのずれが生ずる.これにあわせたデータ処理プログラムを作成し,計測シミュレーションにより正しくデータ処理が行えることの確認と,誤差の累積傾向をモンテカルロシミュレーションにより明らかにした.また,4点法平面測定での新たなゼロ点調整誤差軽減法について提案した. さらに,平成26年度に製作したデバイス探針の摩耗試験装置を改良し,摩擦力測定機構を追加した.走査時の摩擦により生じるカンチレバー保持治具のたわみ角を光学式角度センサにより測定し,機械加工面の一定速走査時の摩擦力の変化を測定した.
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