研究課題/領域番号 |
25420059
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
呉 勇波 秋田県立大学, システム科学技術学部, 教授 (10302176)
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研究分担者 |
藤本 正和 秋田県立大学, システム科学技術学部, 助教 (00581290)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 機械工作・生産工学 / 研削 / 超音波 / サファイア / LED |
研究実績の概要 |
スパイラル超音波援用研削法を提案し,実験装置を試作した上,加工特性の体系的調査を通じてサファイアの高能率かつ高品位研削技術の確立を目指している.本目的を達成するため,3ヵ年研究期間内に,(1)真空チャック付き超音波ユニットを設計・製作;(2)スパイラル超音波援用単石ダイヤモンド切削における材料除去機構の解明;(3)研削加工特性(研削抵抗,加工面の粗さと性状,研削熱,砥石の摩耗)の体系的実験調査;について研究を進めることにしている. 前年度は,真空チャック無しの簡易超音波ユニットを製作してスクラッチング試験と研削実験を行った結果,超音波の援用による臨界切込み深さが約30%増大し研削抵抗が30%以上減少するといった良好な加工特性が確認された.今年度は,実用化を念頭に前年度の結果を踏まえて、主として①レジンボンドとビトリファイドダイヤモンド砥石を用いた際の砥石作業面トポグラフィと摩耗特性,②レジンボンド砥石を用いた際の研削抵抗,③フラクタル解析法による加工面性状,といった内容について研削加工特性の体系的実験調査を行った. その結果,スパイラル超音波の援用によってレジンボンド砥石では砥粒切れ刃の微細化と分布密度の向上が確認されより良い加工面が得られることと,ビトリファイト砥石では良好な砥石作業面が維持され砥石の耐摩耗性が向上することが明らかになった.またレジンボンド砥石を用いた際の研削抵抗は,超音波無しの慣用研削と比べ50%程度小さく抵抗の増加率も減少し,特に材料の被加工性を示す指標である抵抗比は超音波援用によって約33%小さくなることもわかった.最後に加工面のフラクタル解析の結果,面粗さ(Ra値),表面欠陥の種類(破砕・塑性変形・切削痕),材料除去モード(延性・脆性)などをフラクタル指数で評価できることを示した.これら研究成果は,学術論文3編国内発表3回で公表している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度(H26)は3ヶ年計画の2年目で,初年度(H25)で真空チャック付きの超音波ユニットを製作しそれと単石ダイヤモンドツールによるスパイラル超音波援用切削実験を行い,切屑の生成過程や切削抵抗の変化など材料の除去機構について検討するといった項目について研究を遂行する計画を当初は立てた. しかし初年度は,当初実施予定の項目(真空チャック付きの超音波楕円振動ユニットの設計・製作)がユニット設計上の環境不備により次年度以降での実施に変更されたのに伴い,次年度と最終年度で実施する計画であった項目の一部を前倒しで実施した.この状況を踏まえて,次年度としての今年度(H26)も当初予定の内容(スパイラル超音波援用単石ダイヤモンド切削における材料除去過程の検討)が初年度で実施されたため,最終年度実施予定の内容(研削抵抗,加工面の粗さと性状,研削熱,砥石の摩耗等に及ぼす超音波振動,切り込み深さ,送り速度,砥石周速度の影響など研削加工特性の体系的実験調査)の前倒し実施を進めた.特に当初計画していなかったフラクタル解析法による加工面性状の評価といった項目は,研究を進めていくうちに本技術を確立するうえで重要な評価手段であるとわかり,新たに実施することにした.このように,前年度未実施の項目と前倒しで実施した項目,特に当初未計画の項目の実施について総合的に評価すると,これまでの達成度はおおむね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
3ヶ年研究終了の時点で研究目的が達成されるように,所定の研究内容・項目の全部実施を前提に,これまで各々の時期の状況に応じて各項目と内容の実施順序を適宜に臨機応変で調整しながら研究を進めてきた.これから最終年度になるが,その実施項目としてはこれまで未実施の内容を完了させるように次の計画と方策で研究を遂行していく考えである. 1)ワーク固定用真空チャックを備えた超音波楕円振動ユニットは,初年度に当初計画の6インチウェハに対応するように設計を試みたが,大寸法のためウェハを吸着する上端面上の均一楕円微振動が発生するような構造を特定することが非常に困難であることがわかった.そこで,最終年度(H27)でその設計・製作を継続的に行うが,実現が十分可能なように寸法が比較的に小さいものについて新たに検討していく. 2)スパイラル超音波援用単石ダイヤモンド切削における材料除去機構について,初年度に得られた実験的検討の結果を説明する目的でSPH法に基づくFEMシミュレーション解析によって検討を行う. 3)2年目(H26)にファイバ形輻射温度測定装置を新規導入・付設して研削加工特性の一つとしての研削点温度を測定することを計画したが,実施項目の順序変更に伴い,温度測定装置の導入と温度兆歳の実験は3年目に後回しすることにした. 4)これからは最終年度になり,当初予定内容の全部実施完了と研究成果報告書の作成を進めていくことによって本課題の完成を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
1)超音波楕円ユニットの設計に必要な既設圧電解析ソフトウエア(㈱ウェーブリサーチ製PIEZplus)のバージョンアップは、当該メーカが本ソフトウエハの販売を中止したのに伴い実施不能になった; 2)上記ソフトウエハのバージョンアップの未実行に伴う真空チャックを備えた超音波楕円振動ユニットの自力設計が完成できないため,真空チャック無しの簡易型超音波ユニットの製作費は当初予定より大分低かった; 3)上記2)の理由で真空ポンプユニットの導入は延期した.それに伴う関連付属品が未購入となった; 4)実施項目の順序変更により,導入予定の研削点温度測定装置は未導入となった.
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次年度使用額の使用計画 |
真空チャックを備えた超音波楕円振動ユニットの設計・製作はその寸法を小さくした状態で継続させるために,設計から製作まで外注の予定であり,次年度使用額の一部はこの項目の実施に充てる計画である.また研削点温度測定装置(機種変更を含め)や真空ポンプの導入も計画している.
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