研究実績の概要 |
本課題の目的は、イオンビーム照射による隆起現象を利用し、今後幅広い分野での利用が期待されているSi, SiC結晶におけるナノメートルサイズの三次元加工技術の可能性を検証することである。このために、1)隆起加工特性の基礎データを取得し、2)加工表面の力学的特性を評価し、3)大面積化の可能性を確認した。特に、H27年度の実績は以下の通りである。 1)昨年度に隆起高さの制御性を確認していたSiC結晶について、90keVのArビームを用いた加工試験をさらに実施し、加工特性の精度を向上させた。H25年度に導入した減速システムを利用してArビームをSi結晶に照射し、約 1nmの隆起高さを得た。イオン源へのガス導入条件を調整し、多価イオンのビーム強度を向上させた。7価のArイオンを利用して700 keVのArビームを生成し、このビームをSiC結晶に照射した。この条件でも90 keVと同様に照射量によって隆起高さが変化し、最大で本研究の目標であった100 nmの隆起高さを得た。また、最大隆起高さとArビームの飛程が、ほぼ線形関係にあることが分かった。 2)Arビームを照射したSi結晶表面の力学的特性(硬度、ヤング率)を、ナノインデンテーション法で深さ方向に連続的に測定した。測定された力学的特性は深さとともに変化し、ある深さで不連続なふるまいを示した。この現象は本課題で初めて観測した現象であり、昨年度Krビームを照射したSi結晶でも観測されていた。SiC結晶でも同様な測定を行った結果、結晶構造の違いを反映し力学的特性の深さ依存性はSi結晶とは異なる振る舞いを示した。 3)XZ軸テーブルを利用して、ArビームをSiC結晶に10x10 mmの領域でラスター照射し、隆起構造を加工した。
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