研究課題/領域番号 |
25420062
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
野口 裕之 日本工業大学, 工学部, 准教授 (30302623)
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研究分担者 |
鈴木 学 日本工業大学, 工学部, 助手 (30406409)
三宅 正二郎 日本工業大学, 工学部, 教授 (70229813)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ダイヤモンド / セラミックス / 圧縮 / 常温焼結 |
研究概要 |
一般的にセラミックを焼結するためには、加圧した粉末成形体を作製し、これを高温に加熱する必要がある。一方、真空中でセラミック粉末を高速に衝突させることで、セラミック膜の形成に成功している(エアロゾルデポジション法)。本研究では、一番剛性の高い単結晶ダイヤモンドアンビルに、集束イオンビーム加工装置を用いて凹形状に金型加工し、ダイヤモンド金型が座屈する限界付近の300GPa 程度の超高圧でセラミック粉末材料を常温下で圧縮成形のみで焼結させ、世界初のダイヤモンド金型による「セラミックのマイクロ3 次元常温焼結体」を製作することを目的に実験を行っている。 初年度は、無加工の単結晶ダイヤモンドアンビルのキュレット平面を対向させてセラミック粉末を単純圧縮する基礎実験を主に行った。その結果、キュレット部にセラミック粉末を乗せるだけでは粉末材料を均一に加圧することは困難なことから、金属薄の上にセラミック粉末を乗せることで加圧することができるものの、この場合は金属箔が横断方向に塑性流動してしまうため、セラミック粉末の加圧成形体にクラックが発生してしまった。この結果を踏まえ、金属箔に微細穴を空け、この穴にセラミック粉末を充填した状態で加圧する工夫を行った結果、加圧されるセラミック粉末は横断方向に多少は広がるものの、金属箔により拘束されることにより、立ておよび横方向から加圧されたため、成形体中に空孔が全くない成形体をえることに成功した。この試料をSTEMによる透過像で観察した結果、セラミック粒子が塑性変形して、粒子同士は空孔がなく接触しているが、一般的なセラミック焼結体に見られる粒界内の結晶方向が揃った単結晶になってはいないことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ダイヤモンドアンビルでセラミック粉末を加圧する場合において、金属箔に微細穴を空け、この穴にセラミック粉末を充填した状態で加圧する方法を採用したことにより、常温加圧したセラミック成形体には空孔は全くないことから、初年度の研究計画で設定した以下の3つの項目である 1.ダイヤモンド金型の製作 として集束イオンビームによるマイクロ形状加工の実施2.ダイヤモンドアンビル加圧装置の製作 3.圧縮焼結体の解析実験(STEN観察を実施した) 以上は年度内に完了したといえる。
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今後の研究の推進方策 |
アルミナセラミック粉末を単結晶ダイヤモンドアンビルのキュレット部を用いて、金属箔の穴に予備成形したセラミック粉末を充填し、これを圧縮することで、無欠陥(空孔が無い)のセラミック成形体を得ることに成功した。しかし、この成形体のSTEM観察の結果、セラミック粉末は加圧により塑性変形はしているものの、粒界内の結晶構造は単結晶ではなく、結晶方向が不規則であった。この原因としては、本実験では圧縮している圧力は大きいものの、投入エネルギー自体は少なく、結晶を移動させるために必要なエネルギーが加えられていない。 そこで、今後の研究としては、一般的な焼結で用いられている焼結助剤の添加の影響を調査する。さらには、熱以外のエネルギーを加える方法として、超音波振動の負荷などが考えられる。投入エネルギーが結晶性に及ぼす影響などを調査する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
単結晶ダイヤモンドアンビルを用いた常温加圧によるセラミック粉末の常温焼結実験において、常温加圧したセラミック成形体の結晶性の評価を外部に依頼分析を行う予定でいたが、平成25年度中の分析を下記に記す理由により断念した。 理由:得られたセラミック成形体のSTEM画像より、空孔は無いが結晶方向が不均一であり、より結晶方向の揃った、または材料の粉末粒度よりも大きな結晶が得られた後に、外部依頼分析を行うことにした。 以上の理由により、外部依頼分析費用を使用しなかったため、次年度使用額が発生した。 平成26年度は、焼結助剤の添加による結晶性改善実験などを早期に行い、さらには結晶粒径を大きくするための実験を行い、外部依頼分析を実施する予定である。
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