研究課題/領域番号 |
25420064
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
神 雅彦 日本工業大学, 工学部, 教授 (80265371)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 金属接合 / 超音波 / 塑性変形 |
研究概要 |
1.精密金属部品の固相接合の工学的実現性の検討:機械構造の基本要素となる継手形態である突合せ継手に関して,接合方式や装置構造を明らかにした.超音波振動数はf=20kHz,振幅a=8μm(0-p),荷重はP=20~340Nの継手用接合条件とし,突合せ継手が実現可能な実験装置を構築し,提案した接合法が工学的に実現可能なことを明らかにした.超音波付加条件の検討では,超音波周波数は20kHz固定とし,振動波形は正弦波とし,付与時間は0.5~1.0sの範囲に最適値が存在し,あるいは振幅は6μm以上必要であることが明らかにされた.超音波周波数と振動波形に関する調査にあたっては,超音波テスタを新規購入して使用した.振幅の測定では,既存の静電容量型変位計を活用した. 2.精密接合を成立させるテクスチャ形状と超音波付加条件の検討:接合面のテクスチャ形状は,接合面の塑性変形形態,接合強度,あるいはバリの発生に大きく影響する.また,テクスチャ形状は微細なほど本研究により適合するものと考えられる.テクスチャの加工は,ワイヤ放電加工により,0.2mmピッチの直線型テクスチャを作成して,接合状況を観察した.おおむね良好な接合を得ることができた. 3.固相接合メカニズムの解明:固相接合は接合界面のみで発生しているため,その痕跡を捉えるのは難しい.当年度では,接合部および付近の金属の結晶組織の違いを,レーザー溶接と比較して調査した.硬さや結晶構造の相違点を見極め,固相接合のメカニズムの推測を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.精密金属部品の固相接合の工学的実現性の検討:機械構造の基本要素となる継手形態である突合せ継手に関する接合方式および装置構造の検討では,2種類の接合装置を作成し,それらの改良を行い,その最適構造を明らかにすることができた.超音波振動条件として,周波数をf=20kHzに固定し,振幅a=0~8μm(0-p),荷重はP=20~340Nの継手用接合条件を設定することができる.装置構造および条件設定が,突合せ継手が実現可能な実験装置を構築することができている.結果的に,提案した接合法が工学的に実現可能なことを明らかにしている.超音波周波数と振動波形に関する調査にあたっては,超音波テスタの仕様を決め,新規購入した装置が有効利用された.振幅の測定は,既存の静電容量型変位計により十分な精度で測定することができ,データの信頼性も高い. 2.精密接合を成立させるテクスチャ形状と超音波付加条件の検討:接合面のテクスチャの作成に当たっては,当初の予定の超精密非球面加工機ではなく,その前段階として,ワイヤ放電加工によるテクスチャ形状により実験を行った.その結果,ワイヤ放電加工による0.2mmピッチの直線型テクスチャは接合に有効であることを確認することができた. 3.固相接合メカニズムの解明:固相接合は接合界面のみで発生しているため,その痕跡を捉えるのは難しい.当年度では,接合部および付近の金属の結晶組織の違いを,レーザー溶接と比較して調査した.硬さや結晶構造の相違点を観察し,固相接合のメカニズムの推測を行うことができた.ただし,接合界面を正確にとらえることは難しく,次年度の課題も残った.
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今後の研究の推進方策 |
1.精密金属部品の固相接合の工学的実現性の検討(継続):機械構造の要素となる3つの基本継手形態のうち,T継手および重ね合わせ継手に関して,接合方式や装置構造を明らかにする.超音波振動数はf=20kHz,振幅a=8μm(0-p),荷重はP=20~340Nの前年度に明らかにした継手用接合条件を基準として検討する.超音波付加条件の検討では,前年度の知見に基づくも,引き続き,超音波周波数,振動波形,付与時間,あるいは振幅などの条件と接合状態との関係を明らかにしていく.前年度と同様,超音波周波数と振動波形に関する調査にあたっては,超音波テスタを活用し,振幅に関する調査では,静電容量型変位計を活用する. 2.精密接合を成立させるテクスチャ形状と超音波付加条件の検討(継続):テクスチャ形状と塑性変形形態との関係は,FEM(有限要素法)による変形解析により実施する.FEM解析とテクスチャの形成による接合実験を実施し,テクスチャ形状と加工精度や接合強度との相関関係を基本的に明らかにする.FEM解析では,解析コードに塑性加工解析で実績があるDEFORM2Dおよび3Dを利用する.はじめに,解析が簡単な2次元解析を実施し,次に,やや複雑になる3次元解析を実施して,解析精度をさらに向上させる. 3.固相接合メカニズムの解明(継続):前年度の研究で明らかにした接合部および付近の金属の結晶組織の違いを,より物性的に深くとらえるための手法を検討する.また,突合せ継手とT継手の場合の溶接部の組織の変化をも検討する.以上の検討により,固相接合のメカニズムをより深く推測する. 4.研究体制:研究体制は,基本的に前年度を継続するが,研究遂行の妥当性に関するアドバイザーとして,強力超音波技術に関する世界的権威である神奈川大学名誉教授の辻野次郎丸氏の意見を得て,研究の方向性を適宜修正する.
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