精密金属部品の固相接合技術の工学的実現性に関する検討を行った.機械構造の要素となる3つの基本継手形態のうち,T継手および重ね合わせ継手に関して,接合方式や装置構造を明らかにした.実験装置は,超音波振動数f=20kHz,振幅a=8μm(0-p),荷重はP=5.5kNまでの接合条件を可能にするものを製作した.超音波接合条件は,主として,線材と板材との重ね合わせ継手に関して,超音波周波数,振動波形,付与時間,あるいは振幅などの条件と接合状態との関係を基本的に明らかにした. 精密接合を成立させるテクスチャ形状と超音波付加条件に関して検討し,テクスチャ形状と塑性変形形態との関係についてFEM(有限要素法)による変形解析を実施して最適形状を明らかにした.また,各種テクスチャ形状による接合実験を実施し,テクスチャ形状と加工精度や接合強度との相関関係を基本的に明らかにした.その結果,材料を効果的に流動させるためのテクスチャ形状,大きさ,配置などを理解することができた. 固相接合メカニズムの解明に関しては,接合部および付近の金属の結晶組織の違いを物性的にとらえるための検討をした.その結果,ステンレス線と板との接合においては,線が丸断面形状を保ったまま,板に埋め込まれるといった特異な現象を発見した.さらに,T継手および突合せ継手に関して,接合断面の組織の状況を観察し,接合部と未接合部の違いに関して明らかにした. 工業的応用に関しても検討した.具体的には,再生治療用チタン箔の重ね合わせ接合への応用に関して検討した.同チタン箔は,厚さ数十μmで,微細メッシュが形成されており,歯肉を再生させる治療器具となる.その箔を固定するための支持部を接合した.接合に対しては,箔を破ることなく強固に接合する高い技術が要求される.実験の結果では,ほぼ要求通りの適切な接合ができることを明らかにした.
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