研究課題/領域番号 |
25420065
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
竹内 貞雄 日本工業大学, 工学部, 教授 (90216846)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ダイヤモンド膜 / 大気圧プラズマ / エッチング / 超硬合金 |
研究概要 |
マイクロ波励起大気圧プラズマ発生装置に関して、ダイヤモンドのエッチングを可能にするためには高密度大気圧プラズマを安定して発生できるプラズマトーチが不可欠である。1.2kWの出力で30分以上安定してプラズマ発生が可能な水冷式トーチを開発した。ベースプラズマとしてアルゴンプラズマを形成し、酸素ならびに水素ガスを添加することで異なる発光スペクトルが得られ、それぞれ酸素、水素に起因する活性種を含む大気圧プラズマを形成できることを確認した。 3種類のプラズマを用いて、超硬合金基板上に気相合成法で合成した多結晶ダイヤモンドのエッチングを行った。合わせて、プラズマ中に熱電対を装入することでプラズマ温度を直接測定するとともに、超硬合金基板の温度測定も行った。その結果、酸素プラズマが600~700℃、水素プラズマは余剰水素が燃焼するために1000℃程度を示すことが明らかになった。超硬合金基板の温度は、400~600℃程度を示した。ダイヤモンドのエッチングは温度の低い酸素プラズマの場合、15分程度のプラズマ照射で20μm程度のダイヤモンド膜が除去され下地の超硬合金基板が露出した。水素プラズマの場合は、多結晶ダイヤモンド特有の凹凸面(自形面と呼ばれる)の稜線が丸みをおびるといったマイルドなエッチング効果が認められた。なお、いずれのプラズマ照射においても結晶粒界や特定の結晶方位が選択的にエッチングされる現象は認められなかった。さらに、プラズマ照射の境界領域の観察によれば、ダイヤモンド膜は傾斜的にエッチングされるのではなく、極めて明瞭な境界を有していることが明らかになった。すなわち、目視でプラズマと接触している領域のダイヤモンド膜がエッチングされることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究のベースとなる大気圧プラズマトーチについて、高密度プラズマを長時間にわたり安定して形成できるトーチの開発に成功したこと。また、アルゴンプラズマに酸素を添加することで、効率的にダイヤモンドのエッチングが可能であることを実証できたこと。 結晶方位が異なり、多くの結晶粒界を含む多結晶ダイヤモンド膜のエッチングにおいて、結晶方位依存性や結晶粒界の選択的なエッチングが認められないことが実証でき、プラズマの素質としてエッチングに適していることが確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
研究のベースとなる大気圧プラズマについては、トーチはほぼ完成し、ダイヤモンド膜を効率的にエッチングできる基本的なプラズマ条件を明らかにした。プラズマ条件については、さらに最適化を進めるとともに、メカニカルな研磨手段との併用について本格的な実験を進める。具体的には比較的低温で炭化物を形成しやすいタンタルとチタンについて、円錐状に加工したものを回転させることでダイヤモンド膜と摺動させ、その接触部に大気圧プラズマを照射する。大気圧プラズマによる直接的なエッチング効果に加えて、加熱作用によりダイヤモンドを構成する炭素がTaCあるいはTiCを形成するための拡散を促進させることが狙いである。最終的には、プラズマ照射によるエッチング、ケミカル反応の促進、金属板との摺動に伴う平滑面の形成といった効果の確認を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
年明け後、マイクロ波の入射波と反射波の出力をモニターする検出器が不調となり、修理するか買い換えるかの選択を迫られた。この判断に時間が掛かったこと、ならびに提示された納期が予想外に長かったため。 購入を見送ったマイクロ波の入射及び反射出力を測定するための検出端子とアンプの購入代金に充てる。なお価格は50万円以下である。
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