研究課題/領域番号 |
25420065
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
竹内 貞雄 日本工業大学, 工学部, 教授 (90216846)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ダイヤモンド膜 / 大気圧プラズマ / エッチング / 超硬合金 / 触媒効果 |
研究実績の概要 |
前年度において、大気開放状態でのAr+O2プラズマにより多結晶ダイヤモンド膜が効率的にエッチングできることを確認した。本年度は、対象である細径ダイヤモンドコーテッドエンドミルと類似の形状の試料を用いて、プラズマ条件の最適化を行った。細径エンドミルの場合、基材となる超硬部材の質量が小さいために、大気圧プラズマ照射により基板温度が超硬合金の酸化開始温度を超えてしまうことが明らかとなった。すなわち、多結晶ダイヤモンド膜を効率良くエッチングできるものの、露出した超硬合金が酸化することで、薄緑色の粉末状の生成物(酸化粉末)が形成するという問題が生じた。このような温度変化によりダイヤモンド膜の密着力に悪影響を及ぼす事が明らかになった。すなわち、超硬合金の酸化の有無が処理温度の目安となっている。プラズマ投入電力を低減することで酸化を防止することは可能であるが、基板温度の低下に伴いエッチング効率が大きく低下するというトレードオフの関係を解決する必要が生じた。 低い基板温度条件で効率的なダイヤモンド膜のエッチングを実現するために、触媒金属の活用を検討した。具体的には焼結ダイヤモンドのバインダーとして用いられるCo(コバルト)の利用である。Coに接触したダイヤモンド膜は、低い温度条件でも効率的にエッチングが進行することを明らかにした。この触媒効果を実用的な技術に発展させるための予備的な実験も行っている。ダイヤモンド膜上にCo粉末を散布して大気圧プラズマを照射する手法、および大気圧プラズマ中で高速回転させたCo丸棒をダイヤモンド膜に接触させてメカニカルな手段も併用する手法である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予測と異なり、超硬合金の酸化温度よりも高い領域でないとダイヤモンドが効率的にエッチングできないという問題に直面した。しかし、Coの触媒効果を利用することで、超硬合金が酸化しない温度域でダイヤモンド膜を効率的にエッチングできることを明らかにした。このような効果的なリカバリー対策を考案出来たことで、おおむね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、大気圧プラズマ雰囲気下においてCoの触媒効果によりダイヤモンド膜が効率的にエッチングできる基礎技術を開発した。次年度は、この基礎技術をエンドミルの刃先研磨に応用するための周辺技術の開発に注力する。具体的には、大気圧プラズマ内の活性種によるダイヤモンド膜の気相エッチング効果と、Coとの接触/摩擦を利用して化学反応と機械的な摺動を併用するメカノケミカル研磨により、超硬合金が酸化しない温度域で、ダイヤモンドコーテッドエンドミルの刃付け研磨を実現するための技術開発を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予想しなかった問題が発生し、これを解決するための予備実験に時間を取られた。最終的に問題を解決する手段は明らかになったものの、消耗品の購入判断が遅れたために予算執行することが出来なかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
問題解決の方法は明らかになったことから、次年度の早い時期に発注することが可能となった。高純度Co丸棒等の資材を早急に発注する。
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