研究課題/領域番号 |
25420066
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
松村 隆 東京電機大学, 工学部, 教授 (20199855)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 切削 / エンドミル / マイクロ加工 / 機能表面 / 結晶粒制御 |
研究概要 |
低侵襲治療における医療器具では,小型薄肉化に伴い機械的強度の高い材料が求められるとともに,生体物質のぬれ性や付着と術具接触部の摩擦を制御できる表面機能が求められている.本研究では,平成25年度から3年間にわたり,材料の結晶を微細化して高強度化したステンレス鋼の表面のぬれ・付着性と摩擦の制御を目的として,ボールエンドミルによるマイクロディンプルの高能率切削技術を開発する.平成25年度は,平均結晶粒径1.5μmの微細結晶粒ステンレス鋼と通常のステンレス鋼(平均粒径9μm)について平削り切削試験を行い,結晶粒径が切削機構に及ぼす影響を調べた.切削機構におけるモデル変数として,仕上げ面プロファイルからせん断角を推定した.また,平成25年度に購入した圧電型切削動力計を用いて主分力と背分力を測定し,せん断面せん断応力と摩擦角を得た.切削工具は先端角60度の剣バイトで単結晶ダイヤモンドとセラミックスの二種について試験した.両者には,工具材質の違いとともに,切れ刃丸みの違いがあるため.両者が及ぼす影響を調べた.また,工具保持部にはすくい角が変更できる機構を設け,すくい角に対する切削モデルの変化も調べた.以下に得られた成果を示す. (1) 結晶粒が小さくなると,切削力の振動成分が少なくなる.また,せん断角が大きくなって主分力が下がる.一方,刃先にかかる力が大きくなるため,背分力が上がる. (2) 結晶粒径が小さくなると,すくい角が比切削抵抗に及ぼす影響が小さい. (3) すくい角が増加するとせん断角と摩擦角が高くなる. (4) セラミックス工具は切れ刃丸みが大きいため,せん断角は低く,せん断面せん断応力と摩擦角が大きくなる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究当初,顕微鏡直下において二次元切削試験を実施し,切りくず生成の観察と切削力測定を試みたが,対象材料が0.1 mm程度であるため,切削幅方向への材料の広がりが大きく,二次元切削状態が実現でなかった.そごで切削試験については,剣バイトによる平削り切削様式に変更し,切削モデルを推定した.その結果,結晶粒の大きさ,工具形状,切れ刃丸み,工具材質が切削モデルに及ぼす影響を明らかにすることができ,切削試験様式は変更したものの予定していた成果が得られ,おおむね順調に進展していると判断した. なお,平成25年度下半期には,材料の厚みも厚くできるようになったため,今後の切削試験環境が改善された.平成26年度には,この試験材で切削試験を実施したい.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,微細結晶粒ステンレス鋼の切削特性を明らかにしたため,平成26年度では,微小径エンドミルによるマイクロディンプル切削を試み,その切削モデルを検討する.切削力の推定には,研究実施者がこれまで取り組んできたエネルギ解析法を適用し,その妥当性を明らかにする.特に,本研究では切込みが小さいため,刃先力のモデル化も必要となる.次に,加工誤差モデルを作成し,切削力の予測値から加工誤差を推定できるようにする.これによって,加工プロセスを踏まえたディンプル形状の制御が可能となる.
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