平成27年度における本申請研究は「応用展開フェーズ」として,特にスウェード系研磨パッドを用いた場合の実用的な研磨・CMPに適用することを念頭に,基板-研磨パッド間の最適な接触状態の解明を主たるターゲットとして,さまざまな研磨パッドを用いて検討した.その結果,(1)スウェードパッド表面の空孔数が増加すると一定量までは研磨レートは増加し,それ以降では減少することから,空孔数には最適値が存在する.(2)スラリー流れ場は研磨レートに関係のある重要な因子の一つであり,スウェードパッドの空孔数の調整によってスラリー流れ場を制御することは基板-研磨パッド間の最適接触状態を評価する上で有効である.(3)スラリー流れが速い場合は液膜厚みが過剰であり,遅い場合は基板とスウェードパッドの支持部が過剰状態にある.(4)研磨レートの安定化は,CMP中の液膜厚みに起因し,液膜厚みを一様な状態とすることで研磨レートは高い安定性を実現できる.さらには,(4)電界印加によってスラリーの運動制御を可能にすることを確認し,その運動による平坦化加工の実現可能性を示した.また,これらの検討によって,本研究で見出した最適条件を適用すれば,汎用の研磨装置で直ぐに研磨レートの約2倍向上を達成し得ることを明らかにしたことは,実用上において非常に有益な知見であると言える.
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