研究課題/領域番号 |
25420086
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
本田 知己 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80251982)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | トライボロジー / 潤滑油劣化診断 / プロアクティブ診断 / 状態監視 |
研究概要 |
機械の安心・安全運転や長寿命化、石油資源の有効利用の決め手は、「機械の血液」とも表現される潤滑油の「プロアクティブ診断」である。本研究では、潤滑油の劣化の極初期段階での劣化進行メカニズムを解明することにより、潤滑油の「プロアクティブ診断法の創出」を目指す。そのための具体的研究課題として、①顕微FT-IRを用いたその場分析による酸化変質物の初生・成長過程の可視化、②標準サンプルとなる模擬劣化油作製法の確立、③ナノ界面解析による酸化変質物の固体表面への吸着現象とその物理特性の解明、を掲げ、これらの成果を総括することで、プロアクティブ診断法とそのための定量的な診断基準を提示することを目的とする。 平成25年度 :顕微FT-IRを用いたその場分析による酸化変質物の初生・成長過程の可視化 (1)申請設備である顕微FT-IR用冷却加熱ステージを導入し、潤滑油の劣化因子である酸化変質物の初生・成長過程をその場分析できるシステムを構築した。(本田) (2)潤滑油中酸化変質物の温度依存性を調べるために、可溶性の酸化変質物が溶ける温度から徐々に潤滑油を冷却し、一定温度間隔でFT-IRを用いた分析を行った。これにより、酸化変質物の生成段階とその温度依存性を明らかにした。この分析結果と潤滑油をろ過したあとの酸化変質物の色との相関を調べ、本研究で用いている色パラメータが、潤滑油の劣化状態を監視する基準として有用であることを示した。(本田・大学院生) (3)国際会議や評価・診断に関するシンポジウムに参加して本研究成果を発表するとともに、研究に関連する講習会を受講したり、実際に本手法を応用する可能性の高い企業を訪問して議論を行うなど、研究の進展に向けた研究動向の調査を行った。(本田)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画した内容に沿って大きな問題もなく進んでいるため、「おおむね順調に進展している。」とした。ただし、十分なデータ量とはいえず、量的な充実をさらに図っていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、研究計画に沿って研究を進めていく予定であり、平成26年度は「標準サンプルとなる模擬劣化油作製法の確立」を行っていき、酸化変質物の成長段階とその物理化学特性との関係について明らかにする。具体的には、以下の課題について取り組む。 (1) 劣化履歴の明確な模擬酸化劣化油の作製(本田・大学院生):現有の潤滑油酸化安定性評価試験機(RPVOT:Rotating Pressure Vessel Oxidation Test)を用いて、劣化履歴の明確な酸化劣化油を作製する。触媒を入れずに、空気を10 l/h導入しながら、165℃で一定時間保持して段階的に劣化させた模擬酸化劣化油を作製する。オプションとして、潤滑油の劣化の大きな要因の一つである含有水分の量を変えた劣化油も作製する。 (2) 模擬酸化劣化油の性状値(全酸価、動粘度)や酸化変質物の分子構造・分子量(FT-IR、GPCによる分析)との関係(本田):段階的に変化させた模擬酸化劣化油の性状値(全酸価、動粘度)と酸化変質物の分子構造・分子量(FT-IR、GPCによる分析)の関係を調べる。 (3) 模擬酸化劣化油と新油の混合比と酸化劣化進行過程の関係(本田・大学院生):実機における部分更油(全油量に対して数10%新油に交換することで、潤滑油全体の性状回復を図る)における最小更油量の定量化を可能にするために、模擬酸化劣化油と新油の混合比を変えた試料油について、FT-IR、全酸価等でその性状回復過程を詳細に調べる。
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