本研究は、複合極限環境、具体的には極低温・強磁場環境下で使用することの出来るマイクロアクチュエータを、圧電・電歪材料を駆動源として実現することを目標とする。このためにアクチュエータ材料、アクチュエータ構造、設計・制御を目的としたモデル化の3点について研究を進めた。本年度は引き続きアクチュエータ材料に関する検討を進めるとともに、室温から低温までの環境を前提とする設計を目的としたモデル化とその評価を行うことを目標とした。 前年度までに、電歪材料に関する低温環境での駆動特性に関する評価を行い、特に低温環境での分極処理について興味深い知見を得ていた。本年度は、低温環境から高温環境まで圧電・電歪材料を用いた評価素子の駆動状態の測定を行い、圧電定数や焦電係数の比較を行った。低温環境において分極条件に関する再現性の高いデータは得られなかったが、主に圧電材料であるPZTについて、材料の持つ焦電特性の温度依存性によって、温度環境の違いにより変形および応力が変化することを実験的に検証した。 アクチュエータ構造については前年度までに室温から極低温までの温度環境において、予圧調整の必要がない安定的な駆動が可能なアクチュエータを実現していた。本年度はこの結果をもとに、アクチュエータの力学的モデルに基づく駆動条件の検討を行った。駆動に用いる振動子の共振状態を考慮して圧電素子に加える電圧波形を変更することによって駆動波形が変化し、この結果駆動効率が向上することを実験的に検証した。特に、スティックスリップ現象を利用した駆動方式を印加電圧波形の変更によって実現することにより、同一のアクチュエータにおいて微動、粗動の複数の駆動モードを電圧波形の変更により実現できることを示した。さらに、温度環境の影響を考慮し、極低温環境でのアクチュエータ駆動実験の結果によりこの駆動方式の有効性を示した。
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