研究課題/領域番号 |
25420092
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
若林 利明 香川大学, 工学部, 教授 (00294736)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 環境対応 / トライボロジー / ニアドライ加工 / MQL加工 / 含酸素化合物 / アルミニウム合金 / 難削材 |
研究概要 |
極微量の切削油を供給して行う環境に優しいニアドライ加工を取り上げ、油剤の作用機構をトライボロジー的立場から詳細に検討し、アルミニウム合金や難削材の切削性能と関連づけて明らかにすることを目的としている。本年度に得られた成果は以下のとおりである。 アルミニウム合金に対しては、極性物質として大きな効果をもつ可能性のあるアルコールに着目し、引火の危険を避けるという安全性の観点からポリオールエステルに各種アルコールを混合して検討を行った。その結果、分子が直鎖状に近い構造や気体になりやすい性質を有するアルコールが高い切削性能を示すこと、良好な切削性能のアルコールの中では、その構造と性質のバランスに優れる2-オクタノールが最も有効であること、油剤供給量が十分な場合、加湿エアーの併用によって、さらに切削性能が向上することを実証した。 上記の成果から、アルミニウム合金のMQL加工に対しては、最適な複合ニアドライシステムとして、ポリオールエステルにアルコールを併用した油剤による加湿式MQL加工が提示できたことになり、当初計画より早く本課題の技術開発を達成した。このため、次年度以降に関しては、難削材の複合ニアドライ加工システム構築に向けた検討に傾注する方針とした。 その難削材について、本年度は主としてチタン合金のMQL旋削加工による検討を行ったところ、アルミニウム合金と同様、ポリオールエステルとアルコールの併用油剤が優れた切削性能を示す場合があることを見出した。ただし、効果的なアルコールの構造は必ずしもアルミニウム合金に有効なものと一致せず、この点の究明が今後の課題である。 なお、本研究の一部成果により、研究補助者の学部4年生(氏名:山田圭祐)が、「MQL方式を用いたチタン合金の旋削加工」のテーマで、平成25年度の軽金属学会中国四国支部奨励賞を受賞した(受賞日:平成26年3月10日)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
アルミニウム合金のMQL加工に対しては、最適な複合ニアドライシステムとして、ポリオールエステルにアルコールを併用した油剤による加湿式MQL加工が提示でき、当初計画より早く本課題の技術開発を達成した。このため、次年度以降に関しては、難削材の複合ニアドライ加工システム構築に向けた検討に傾注することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の検討結果を参考に、平成26年度は、代表的難削材であるチタン合金用MQL加工油剤の候補となる含酸素化合物の実用切削性能を評価し、それらの化学構造と関連づけて検討する。また、含酸素化合物以外の極性物質の評価も適宜実施する。さらに、複合ミスト方式の適用を種類の異なるチタン合金や他の難削材にも広げることを試み、油剤ミストと水溶液ミストの最適な組み合わせ条件や適切な供給法を検証する。 一方、平成27年度は、平成26年度の結果をふまえ、切削性能に対する影響因子の絞り込みを行い、難削材のニアドライ加工試験を実施して、これらのニアドライ加工に適合する潤滑剤の作用メカニズムを究明する。また、以上の成果にもとづいて、難削材のニアドライ加工に優れる油剤とその処理方法を確定するとともに、この加工に最適な複合ニアドライシステムを提示する。
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次年度の研究費の使用計画 |
予算計画にしたがって適切な使用をした結果として生じた120円の残額について、当該年度内で無理に使い切ることはせず、会計上可能な繰越処理とする選択をしたため。 次年度使用額として生じた120円の繰越金については、当初計画と同様、物品費において、消耗品購入費用にあてる予定である。
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