平成27年度は、改良した複合ミスト方式の加工液供給装置を用いて、オイルミストのみを供給するMQL加工、水溶性切削油剤のミストのみを供給するクーラントミスト(CM)加工、MQLとCMを組み合わせた複合ミスト(HM)加工、油剤を大量に使用する湿式(WET)加工の4種類についてTi合金の実用切削性能を評価した。 まず、ポリオールエステルとオレイルアルコールを含酸素化合物の代表に選出し、MQL加工を行ったところ、改良前の装置で得られていた両者の併用による工具寿命延長効果が今回の装置では必ずしも認められず、この理由に関しては、切削性能評価結果の再現性も含め今後の検討課題とした。次にCM加工ではCM供給量が増加するほど、その冷却作用によって切削距離が延び、とくに400mL/hまで増やすとWET加工より工具寿命が約1000mも延長して、かなり切削性能が向上した。ただし、冷却効果だけであればWET加工の方が優れているはずであり、今回の結果より、CM加工では、工具の熱的摩耗を防ぎつつ、チタン合金の硬度が低下した状態となる温度範囲で切削が可能であることを究明した。一方で、HM加工の場合、MQLミストとCMを同時供給するため、CM中に含まれる可溶加剤がMQL油剤を抱き込みミセル化することでエマルションとなり、これがMQL油剤の潤滑効果を隠蔽するとともに、CMの供給状態を悪化させ、CM単独供給と比較してほぼ同等か、若干短い工具寿命となることを明らかにした。 以上の成果にもとづいて、代表的な難削材であるTi合金に最適な複合ニアドライ加工システムとしてCM加工を提示することができた。 なお、本研究の一部成果により、研究補助者の修士2年生(氏名:山田圭祐)が、「ニアドライ方式を用いたチタン合金の旋削加工」のテーマで、平成27年度の日本化学会中国四国支部長賞を受賞した(受賞日:平成28年3月9日)。
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