研究課題/領域番号 |
25420094
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 産業技術大学院大学 |
研究代表者 |
舘野 寿丈 産業技術大学院大学, 産業技術研究科, 准教授 (30236559)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 積層造形 / チキソトロピ / 超音波 / 振動 / レオロジー / 生分解性材料 |
研究概要 |
本研究は,生分解性を持つ材料を使った積層造形の実現に向けて,超音波を援用した新たな造形手法の確立を目的としている.提案する超音波の援用方法においては,材料となる分散液がせん断を生ずることで粘性が低下し,静止すると粘性が回復するチキソトロピと呼ばれる性質を用いる.そこで,粘度低下を起こす材料の種類や,粘度低下の程度などを,振動との関係で定量的に明らかにすることが重要である.本年度は,まず,振動によって粘性が低下する現象の確認を目的とし,(1)チキソトロピを持つ材料の準備,(2)振動による粘度低下を測定する実験装置の開発,(3)粘度低下測定実験,について実施した. 材料においては,チキソトロピの性質を持つことが知られているベントナイトを採用した.実験装置は,試料を入れたビーカに対し,下部から振動を与えながら粘度測定ができる装置を開発した.測定装置には回転式粘度計を採用し,チキソトロピ性を有する材料にも適用できるようTバースピンドルおよび上昇ステージと共に使用するように整備した.加振装置は,可聴域程度の周波数を想定したアクチュエータとして,ボイスコイルモータを採用したものと,超音波を想定したアクチュエータとして,ピエゾ素子を採用したものとを開発した.粘度低下測定実験をしたところ,約10Hzの振動において,加振に伴う粘度低下,および静止による粘度回復が確認された.高い周波数では,顕著な粘度変化は見られず,その原因は,下方からの単純な加振では分散液のせん断が発生しにくいためと考察された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においては,提案手法の実現に向けた科学的なアプローチとして,材料の加振により発生する粘度低下の現象を定量的に測定することを重視している.そのためには,材料を加振しながら粘度を測定することができる今までにない装置の開発が必要である.本年度の研究において,その装置を開発し,実験により,粘度低下の定量測定を実現することができた.また,粘度低下を生じさせる加振方法についての新たな知見も得ることができた.超音波加振による粘度低下の確認までは至らなかったが,おおむね順調といえる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の実験によって,材料の加振による粘度低下および静止による粘度回復が確認されたので,当初の計画どおり,加振による吐出実験へと研究を進行させる.具体的には,(1)吐出実験装置の開発,(2)加振状態での吐出実験,を実施する.ただし,超音波加振による方法には,新たな工夫が必要であることが明らかになったので,加振装置の大型化や,金属フィラーの粒径を変えるなど,せん断を生じさせる方法の検討を,当初の計画と平行して進める予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた主な理由は,実験材料用の物品費と旅費にある.実験材料については,超音波での実験に有効性が確認できなかった影響で,材料の種類を決定できず,購入に至らなかった.旅費については,本年度中に旅費を伴う学会発表を予定していたが,適切な会議が見つからなかったため,支出されていない. 次年度使用額の対象となった物品費と旅費については,予定していた用途に支出する.すなわち,実験材料は来年度中に決定して購入し,旅費は来年度に開催される国際会議での発表のために支出する.これらの支出において若干の残額は発生するものの,基本的には翌年度分として請求した助成金は当初の計画どおりに使用し,大きな計画変更は無い.
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