研究課題/領域番号 |
25420096
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
平塚 健一 千葉工業大学, 工学部, 教授 (30181168)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | トライボロジー / 摩耗 / 貴金属 / 湿度 |
研究実績の概要 |
昨年度のAlの摩耗に対する非摩擦時間効果と湿度の効果の研究に続いて,今年度は金属の種類をAu,Ag,Cu,Ptなどの貴金属および反応性の高いTiに増やし,その摩耗に対する非摩擦時間効果と湿度の効果について調べた.この時,酸素と水蒸気の役割についてより厳密に調べるために,水蒸気のキャリアガスとして酸素とアルゴンを使用した.得られた結果は以下の通りである.アルゴン雰囲気中において湿度の影響があったのはCuのみであった.その摩耗率の湿度特性は,ある水蒸気量で極大値となった.全ての湿度中でころ状の摩耗粉が確認された.Ag, Auの摩耗率および摩耗粉形状に対して湿度の影響はほぼなかった.酸素雰囲気においてCuとAgではアルゴン中よりも摩耗率は多くなったが,Auでは同じ程度であった.このときの摩耗の湿度特性について,Cuの摩耗率は湿度の上昇とともに増加した.それに対して,Agの摩耗率にはほとんど湿度の影響が見受けられなかった.ただし,Agの場合摩耗粉のサイズは水蒸気が含まれると小型化した.Auの摩耗粉に対しては,アルゴン雰囲気と同様酸素中でも湿度の影響がなかった.Ti同士の摩擦では,すべての条件に共通して摩擦開始から摩擦500回までは徐々に軸間距離が離れ,その後に軸同士は接近した.その傾きはいずれの条件においてもほとんど違いがなかった.以上から次の結論を得た.1) Auの摩耗に対して水蒸気および酸素の影響はない.2) Ag同士の摩擦における摩耗粉の生成過程に対して酸素雰囲気でのみ水蒸気が物理吸着することで影響を及ぼす.3) Cuの摩耗を酸素および水蒸気が促進したのは表面に生成した酸化物と水の物理吸着に伴う凝着抑制作用による.4) Tiの摩耗に対しては酸素濃度によらず湿度の効果はほとんどなかった. このように,金属の摩耗に対してその活性によって酸素と水蒸気の効果が異なることが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は酸素とアルゴンを水蒸気のキャリアガスとすることによって,金属の摩耗に対する酸素と水蒸気の効果を独立して論じることに成功した.特に貴金属の摩耗特性から酸素の化学吸着と水の物理吸着の役割が明確となった.
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今後の研究の推進方策 |
金属の種類をさらに増やすことで,金属の摩耗に対する酸素と水蒸気の役割についての全貌を明らかにする.さらに,雰囲気気体の温度を室温よりも上げることで,雰囲気気体の反応性を高くし,その際の摩耗挙動を調べる.それによって金属の摩耗に対する雰囲気気体の作用機構についてより本質的な議論を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
残りが一万円未満となり,本研究に必要な額に満たなかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
気体を購入するのに使用予定である.
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