平成26年度も前年同様,物体前縁部の受容機構を解明することを目的として,風洞実験と数値計算の両面から研究を進めた.まず風洞実験では,これまでに開発したスパン方向に一様なシート噴流が生成可能な外乱発生装置を用いて,一様流中の局所外乱に対する平板境界層の応答について調査した.その結果,外乱に含まれる卓越した周期的な速度変動が境界層に受容され,境界層内部でT-S波型の速度変動として成長することがわかった.次いで,本装置を平板前縁上流の一様流中に設置し,その位置を変えながら導入された速度変動が境界層に及ぼす影響について調べた.その結果,シート噴流を脈動させても2次元T-S波の形成は見られず,速度変動は下流で減衰したが,前縁より上方から定常噴流を導入すると,境界層内の速度変動は一時的に強くなる様子が見られた. また,数値計算では.境界層中の乱流の生成に寄与する渦構造について調べるとともに,一様流中の2次元渦度攪乱に対する平板前縁部受容性について調べを進めた.前者では,バイバス遷移を取り上げ,低速ストリークに噴流を短時間噴射することで強制的に乱流に遷移させた境界層の発達過程を追跡した.その結果,渦の伸長を引き起こす変形場が形成されてから強い渦が発現するまでには時間遅れがあることが示唆された.後者では,境界層内の速度変動の成長に対して,前縁部と平板部のつなぎ目は周波数に依存した影響を及ぼすことがわかった.
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