最終年度である平成27年度は,これまでに得られた知見を踏まえ,数値計算により流れ場を詳細に解析することで物体前縁部の受容機構の解明を試みた.本研究では,一様流に加えた人為的な周期渦度撹乱とそれに反応して平板壁面で生成される渦度との相互干渉に着目し,それらが境界層内の渦度変動の成長に及ぼす影響について,曲率が連続的に変化する前縁部と零で一定の平板部,そして両者のつなぎ目にあたる接合部の3つの領域に分けて議論した.具体的には,壁面の一部に滑り条件を課し,この領域の壁面近傍の速度変動だけを強制的に抑制することで壁面からの渦度の供給を遮断し,一様流から境界層内に入り込んだ渦度撹乱の振る舞いを調べた.一方,壁面から供給される渦度の影響については,一様流中の周期渦度撹乱に反応して生成される壁面渦度の情報を予め記憶しておき,撹乱を含まない一様流中に置かれた平板の壁面境界条件として与えることで調査した.その結果,境界層中央付近に現れる渦度変動のピークは一様流から境界層内に入り込んだ渦度変動の寄与が大きいことや前縁部及び接合部では壁面から供給される渦度の影響を強く受けていることがわかった.さらには,境界層内の渦度変動の波長は前縁部から接合部にかけて次第に減少し,下流の平板部に至るとT-S波の波長と同程度となることもわかった.
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