研究課題/領域番号 |
25420106
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
尹 鍾晧 東京工業大学, 精密工学研究所, 助教 (30456256)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 高圧水素 / 圧力容器 / ガス温度 / 準等温化 |
研究実績の概要 |
本研究では、水素の温度を急に上昇させることなく、安全かつ省エネルギーで充填時間を短縮するため、容器内に金属製綿を封入することで容器内温度変化を抑制する技術を用いた準等温化圧力容器を開発する。水素燃料電池自動車の容器における高圧充填に掛かる時間の革新的に短縮化し、その研究基盤を確立することを目的とする。 本年度は昨年試作した耐圧35MPa(G)まで充填が可能な10Lの高圧水素用アルミ容器を用いて、実験は福岡にある水素エネルギー製品研究試験センター(HyTReC)の設備を利用して35 MPa(G)まで充填・放出試験を行った。 圧力変化の速度によって温度変化を評価するため、流量が流れる所の大きさが違う三つの絞りを試作した。この絞りはSUS材料で設計し、耐圧40 MPa(G)までの高圧水素実験が可能にした。また、容器表面に三つの温度センサと容器内部に直径φ1mmの温度センサを挿入し温度変化を計測し、準等温化圧力容器の圧力と温度変化を検討した。 一方、耐圧75MPa(G)まで充填が可能な37Lの高圧水素用容器一個を関連会社から提供して貰った。この容器はType4でアルミ容器に炭素繊維強化プラスチック(carbon-fiber- reinforced plastic、CFRP)を巻き付けたType3とは違い、CFRPのみでなっている。 国内発表としては2014年5月に東京機械振興会館で開催される平成26年春季フルードパワーシステム講演会講演に参加し「準等温化原理を用いた水素貯蔵タンクの提案」の内容で発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今までの研究では10Lの高圧水素用アルミ容器を一個試作し、実験は福岡にある水素エネルギー製品研究試験センター(HyTReC)の設備を利用して充填試験を行った。 試験は容器に金属製綿が封入されていない空圧力容器の場合と、金属製綿が封入されている準等温化圧力容器の場合において行った。準等温化圧力容器の内部には直径50μmの銅線を入れ、銅線の体積充填率を6%にした。温度センサを圧力容器内の中央部に沿って設置し充填における二つの容器内の時間による温度変化を計測した。容器の表面にも三つの温度計を設置し、充填における容器表面の温度変化を計測した。10Lの細長い容器であるため容器内に温度分布が生じましたが、準等温化圧力容器の温度上昇の抑制性を実験により確認した。 さらに圧力変化の速度によって温度変化を評価するため、流量が流れる所の大きさが違う三つの絞りを試作し、準等温化圧力容器の圧力と温度変化を検討した。温度変化は充填のみならず放出の時にも放出速度による温度変化を検討した。 等温化原理の有効性を確認するため、先行研究を参考に集中定数系における数値解析を行い、タンク素材および充填材の観点から有効性を検証した。まず空のタンクと充填材を封入したタンクでは熱容量による温度抑制効果が表れた。次に等温材と同程度の熱容量を持つ銅の丸棒を封入したタンクと等温化原理を用いたタンクでは伝熱面積の差による充填直後の温度上昇の抑制効果が表れた。以上の結果より、等温化原理の効果として熱容量の増加による全体的な温度抑制と伝熱面積の増大における充填直後の急激な温度上昇の抑制が確認された。圧力変化の速度においては変化速度が速いほど空容器に比べ上昇する温度を最大値の抑制効果が大きい。またタンク素材の観点では熱伝導率の悪いタンクである程、等温化原理の効果が大きいことがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
今までの研究では10Lの高圧水素用アルミ容器における35 MPa(G)までの研究を行った。今後の研究では高圧水素で最新開発されているType4に容器を用いて、準等温化技術の有効性を確認する。Type4の容器は関連会社から提供して頂いたもので、耐圧75MPa(G)まで充填が可能で、容器の容量は37Lである。水素燃料電池車用で開発されている容器でアルミ容器を使用せず、炭素繊維強化プラスチック(carbon-fiber- reinforced plastic、CFRP)のみで巻いた容器である。 この容器を用いて今までと同じく水素エネルギー製品研究試験センター(HyTReC)の設備を利用して試験を行う。容器に金属製綿が封入されていない空圧力容器の場合と、金属製綿が封入されている準等温化圧力容器の場合において試験を行う。準等温化圧力容器の内部には直径50μmの銅線を入れる。温度センサを圧力容器内の中央部に沿って設置して充填による二つの容器内の時間による温度変化を計測する。 100MPa用圧力センサを設置し、充填放出による二つの容器内の時間による圧力変化を計測する。この実験結果から高圧水素ガスにおける準等温化圧力容器の温度変化と伝熱の関係を明らかにする。 また、集中定数系における数値解析を行い、タンク素材および充填材の観点からその有効性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
福岡にある水素エネルギー製品研究試験センター(HyTReC)の設備を利用して行った実験が計画より早く終わり、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
福岡にある水素エネルギー製品研究試験センター(HyTReC)で新たな実験を計画しており、実験設備使用料として使用すつ予定である。
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