研究課題/領域番号 |
25420108
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
三角 隆太 横浜国立大学, 工学研究院, 特別研究教員 (40334635)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 撹拌 / 晶析 / CFD / 結晶摩耗 / 二次核発生 / Population Balance解析 / 固液混相流 / エロージョン |
研究概要 |
本研究では、化学・製薬・食品工業での代表的な反応・分離操作の一つである晶析操作について、結晶製品の高度な品質予測・制御方法の構築、ならびに生産性の向上を目指して、数値流動解析およびモデル実験を行った。得られた知見は以下の通りである。 1.晶析操作における核発生の主要な因子と考えられる、結晶粒子と撹拌羽根の衝突現象に関連して、撹拌羽根の設置高さhが異なる条件(液深Hの1/2と1/10)について羽根への粒子衝突現象をCFD(Computational Fluid Dynamics)により定量化するとともに、羽根まわりの液流速との関連性について検討した。その結果、羽根前面での衝突についてはhの影響は少ないことがわかった。一方、背面での衝突では、h=H/10の場合、粒子の衝突位置は上下方向に2つに分割され、おもに羽根の下部に集中するのに対して、h=H/2の場合は羽根背面全域に広がることを明らかにした。 2.上記のCFDの結果について実験的に検証するために、撹拌槽内で回転する撹拌羽根近傍での粒子の挙動を観察するために、高速度カメラを撹拌翼の回転と同期して回転させ、粒子の挙動をビデオ撮影するシステムを開発した。あわせて、撮影された動画をもとに粒子の軌跡、ならびに羽根への衝突速度を算出するための画像解析プログラムを作成した。 3.固液撹拌においてしばしば問題となる粒子衝突による羽根のエロージョン問題に着目した。羽根面に対して法線方向の衝突エネルギーの累積量にもとづいて、羽根面塗膜のエロージョン量の経時変化を予測できることを明らかにした。 4.カリミョウバンの種晶添加冷却晶析をモデルケースとして、溶液の過飽和度の経時変化を考慮したPopulation BalanceとMass Balanceの連成解析手法を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、(a) 撹拌羽根への結晶粒子の衝突現象の定量化とそのメカニズムの解明と、(b)有効核化モデルの開発を目的とした。 (a)については、まず羽根の設置高さが異なる条件についての結果を整理し、国際会議(ACOM2013)ならびに国内会議(化学工学会第44回秋季大会)にて成果を発表した。さらに、実験的な検証を加えるために回転する撹拌羽根近傍での粒子の挙動を観察するための回転同期・高速動画撮影システムを開発し、国内会議(日本海水学会若手会第5回学生研究発表会)にて成果を発表した。なお、この発表は同会において優秀賞を受賞した。さらに、羽根への粒子衝突現象の実験的な検証方法の1つとして、羽根塗膜のエロージョン現象に着目し、その定量化と予測シミュレーション手法を構築し、その成果を国際会議(WCCE9)ならびに国内会議(化学工学会第79年会)にて発表した。なお、この発表は同会において学生賞銅賞を受賞した。 (b) については、カリミョウバンの種晶添加冷却晶析をモデルケースとして、溶液の過飽和度の経時変化を考慮したPopulation Balanceの解析手法を構築し、国内会議(化学工学会盛岡大会)ならびに国際会議(WCCE9)で成果を発表した。 以上、当初の計画に従いおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に引き続き、(a) 数種の撹拌翼形状を対象にした結晶粒子の衝突現象の定量化とその共通するメカニズムの解明、ならびに(b) 異なる溶液条件下における微小結晶粒子の有効核化率の定量化に関する検討を進めるとともに、(c) 回分式または連続式冷却晶析操作をモデルケースとして、結晶粒子の生成・成長・消失を考慮したPopulation BalanceとMass Balanceの連成解析手法の構築を目指す。
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