研究課題/領域番号 |
25420110
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
松原 雅春 信州大学, 工学部, 准教授 (10324229)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / イタリア / 乱流 / 境界層 / トリッピング / 対数則 / 相関 |
研究概要 |
信州大学工学部の小型低乱風洞における乱流境界層にて圧力-速度相関の測定を行った.長さ2 m幅0.6 mの平板に発達した境界層を上流に取付けたトリッピングで乱流に遷移させた.トリッピングとして「V」字形の突起がスパン方向に並んだテープを5枚均等間隔で貼ったもの,同様のテープを7枚とその下流に紙ヤスリを貼ったもの,さらにx = 150 mmにそれぞれ直径1,2,6 mmのステンレス管を取付けたもの,計5種類を用いた.これらのトリッピングにより境界層を遷移させ,十分発達した乱流境界層で測定した.主流流速は14 m/sで行った.測定は圧力-速度相関は熱線プローブと64ch圧力センサーアレイを用いて測定した.5種類のトリッピングを比較した結果,平均流速分布や乱れ強さ分布はほとんど変化しないにもかかわらず,圧力-速度相関の分布に明白な違いが現れた. また,能動トリッピングによる実験も行った.能動トリッピングには周期的に吹出し・吸込みをする孔をスパン方向に並べられた装置を用いた.吸込み吹出口は流れ方向幅1 mm,スパン方向幅4 mmの長方形でそれぞれがスピーカに接続されており,これをスパン方向に72個並べた構造を持つ.この装置で二次元トリミーン・シュリヒティング波(TS波)を発生させた場合と2つの斜行波を重ねて発生させた場合の実験を行った.その結果,平均流速分布や乱れ強さ分布に変化はないにもかかわらず,圧力-速度相関の分布に僅かではあるが変化が見られた. 以上の結果より,乱流境界層は平均流速分布が同じでも,撹乱構造が全く違う場合があることがわかった.逆に乱流境界層の撹乱の性質が違っても,平均流速分布がほぼ同一になると言える.これは平均流速分布における対数則が撹乱の性質にほとんど影響せず成立することを強く示唆している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トリッピングの影響については,信州大学が保有する風洞で可能なレイノルズ数の範囲で明らかとなった.また,能動トリッピングの評価も終了し,計画通りに研究が進んでいると言える.
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今後の研究の推進方策 |
第三世代の圧力センサーアレイを新しく開発し,トリッピングすぐ下流から速度と圧力変動相関を測定し,さらに遷移過程の可視化を行い,遷移過程における撹乱の構造とスケールを調べる.さらに遷移中の撹乱とx = 1500 mmの下流での乱流撹乱との比較をし,それらの因果関係を明らかにする. さらに,二次元TS波による遷移と斜行波で励起した縦渦による遷移の比較実験を測定範囲を広げて行う.また,能動トリッピングで発生した周期撹乱が下流のどの位置まで位相を一定に保てるか調べる.この実験により,トリッピングと下流の乱流境界層の関連を定量的に評価する. イタリアの大型の円管流用の受動トリッピング装置を製作し,イタリアにて取り付け作業を行う.装置支持にアルミ板とアルミフレームを用いる.測定用のコンピューター,A/Dボードなどの測定環境も整備する.製作の一部はイタリア側にも協力してもらい,日本で製作した部品とのアセンブリにはこちらから現地に赴いて行う.年2回,各2週間程度の滞在を予定している.
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