本研究は風車単機の出力変動と構造系への負荷変動につき、風車運転制御により変動振幅を低減することを目指し、以下の要素技術の開発を数値解析と実験により行うものである。①自然風流入風下で運転制御する風力発電システムの数値解析モデルの構築と解析モデルの妥当性検証。 ②制御対象とする小型風車実験システムの設計・製作とこれを用いた実証実験。 ③風車への瞬時流入風速の推定方法の確立。 ④風車運転制御アルゴリズムの構築と有用性の確認。 最終年度である平成27年度には、上記項目の内の①、②、④を実施し、研究を総括した。 項目①に関しては、流体―構造連成解析における構造系モデルにつき風車翼・ナセル・タワーを含めた解析モデルの構築を行いより実際の風車構造系に近づけた結果、連成解析モデルの妥当性に改善が見られた。特に風車翼の振動がタワー構造系への負荷変動に及ぼす影響が明確に表れるようになった。この構造系モデルの改善と昨年度の流体負荷解析モデルの改善(計算負荷の大幅低減)を組み合わせた結果、項目①に関する目標はほぼ達成できた。 項目②に関しては、小型風車実験装置を屋外にて運転するシステムを完成させ、実験を実施した。具体的には自然風況下にて風車運転制御を実施し、運転制御に伴う風車ロータの空力過渡特性を実験的に調査し、風車周速比、運転制御速度が空力過渡特性に及ぼす影響を調べた。この実験結果は①で構築した数値解析モデルと比較検討し、解析モデルの妥当性についても検討を行った。 項目④に関しては、昨年度に引き続きPID制御に基づく風車制御アルゴリズムを構築し、出力変動を約50%に低減できることを確認した。この風車制御アルゴリズムにおいては、項目③により構築された風車への瞬時流入風速の推定方法が組み込まれており、この成果により、風車単機の出力変動低減が見込まれる。
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