地球温暖化や気候変動、都市の発展などに伴って、大気汚染問題やヒートアイランド現象、ゲリラ豪雨など都市の風環境問題が深刻化しており、都市のストリートキャニオン現象もその一つである。ストリートキャニオン現象は、ビルの間に挟まれた大通り上空に大気汚染物質や熱が滞留する現象であり、その解明は、環境アセスメントや都市計画において重要である。本研究では、動的乱流発生装置を有する大気乱流風洞を用いて、(1)乱流レイノルズ数の異なる乱流中でストリートキャニオンの流れ場を解明し、(2)大通り表面の冷却効果を明らかにするとともに、(3)大通り上空の汚染物質の拡散機構を解明することを目的としている。都市の大気境界層(平均速度分布)と同様な流れ場を形成し、乱流レイノルズ数、大通りの幅、建物の高さおよび建物の配置を変化させて、流れの可視化、大通り表面の温度計測、汚染物質の可視化および濃度計測を実施し、以下の成果を得た。 (1)ストリートキャニオン内の流れ場の構造について、風上側建物上面から剥離した流れ、風上側建物間を通ってキャニオン内に流れ込む流れ、キャニオン内に発生する循環流、乱流運動によって風上側建物背後に大きく回りこむ流れで主に構成されている。(2)乱流レイノルズ数がより大きい乱流場の方が、乱流運動によって大通り表面はより冷却され、汚染物質はより拡散されてストリートキャニオン内の換気を促進する。(3)道路幅よりも建物高さが低い場合、乱流運動を伴った横風がキャニオン内の物質拡散に与える影響が大きく、汚染物質の濃度は乱流特性および建物配置などに依存する。(4)道路幅と建物高さが同程度の場合、横風による影響よりもキャニオン内に存在する循環流が支配的になり、汚染物質が高濃度で滞留する。(5)風下側建物よりも風上側建物が高い場合、その反対の建物配置よりも、キャニオン内の濃度は一様な分布になる。
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