研究課題/領域番号 |
25420121
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
西田 秀利 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (40164561)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | フェーズフィールド法 / シームレス仮想境界法 / 二相流 / 安定化 |
研究実績の概要 |
平成26年度においては研究計画通り,①二相流に対するシームレス仮想境界フェーズフィールド法の有効性の検証,②相変化を伴う二相流に対するシームレス仮想境界フェーズフィールド法の適用性の検証,③周囲流体との相互作用の一括シミュレーションの一部を実施した. ①に関しては,前年度の曲率を有する境界形状に対して若干異なる結果となったが,境界条件を考慮した多変数テーラー級数展開を用いた内挿法に変更して実施することにより,基本的な検証問題に対して良好な結果を得ることに成功した. ②に関しては,前年度に実施した相変化モデルとして温度回復法を用いて1次元蒸発問題に対して有効性を確認したことを拡張し,2次元蒸発問題に対して適用を行い,物理的に妥当な結果を得ている.さらに,安定化フェーズフィールド法に関しては,フィルター処理の手法を化学ポテンシャルの境界条件をも考慮したものに変更することにより,5~7倍の時間刻み幅で計算可能となる結果を得た. ③に関しては,一括シミュレーションの前段階として,機能性薄膜の効率的な形成法としての自己組織化に着目し,フェーズフィールド・クリスタル法を用いて自己組織化のシミュレーションを実施した.その結果,初期分布が安定なハニカム構造形成に影響を及ぼすことが判明し,さらに,ランダムな初期構造に対しても境界条件を工夫することで安定なハニカム構造が形成されることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究計画は,①二相流に対するフェーズフィールドシームレス仮想境界法の有効性の検証(継続),②相変化を伴う二相流に対するフェーズフィールドシームレス仮想境界法の適用性の検証(継続)の実施である.①に関しては,課題はデカルト格子に沿わない境界形状にするシームレス仮想境界法の検証であり,多変数テーラー級数展開を採用することにより,参考解と一致する結果を得ることができた.②に関する本年度の課題は,安定化フェーズフィールド法の確立であり,支配方程式であるCahn-Hilliard方程式の化学ポテンシャルを離散フィルター処理化学ポテンシャルに置換する手法を相分離問題に適用した結果,従来の10倍の時間刻み幅で計算可能であったが,相変化を伴う解析においては5倍程度の時間刻み幅が限界であった.この点に関しては,離散フィルター以外の方策を検討中である.本年度においては,③周囲流体との相互作用の一括シミュレーションの一部も実施した.これは,フェーズフィールド・クリスタル法を用いて,安定なハニカム構造形成の要因を探るものであり,機能性薄膜形成に必要な要素である.その結果,自己組織化により安定なハニカム構造を形成するための要因として初期分布が支配的であるが,ランダムな初期分布に対しても境界条件を工夫することにより安定構造が得られることが判明し,実際の製造工程に応用できることが期待される.従って,進捗状況が良好なテーマと芳しくないテーマとが混在するものの,研究全体としては当初の計画を達成していると判断している.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度においては,ほぼ当初の計画通りに②相変化を伴う二相流に対するフェーズフィールドシームレス仮想境界法の適用性の検証を引き続き実施するとともに,より実際問題に近い③周囲流体との相互作用の一括シミュレーションを実施する予定である.また,本年度に研究計画を達成できなかった項目(相変化を伴う解析における安定化フェーズフィールド法の構築)に関しても,安定化に資する手法を導入することを念頭に引き続き研究を実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品に充当する予定であったが,備品の納入時期がずれ込んだため使用には至らなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
コンピュータ関連の消耗品に充当する予定である.
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