研究実績の概要 |
本研究では、ロケット用極低温推進剤ターボポンプの長寿命化を図るため、広範囲の稼働領域で安定に作動する極低温ハイブリッド・ジャーナル軸受(HJB)の開発を目指す。 HJBすきま内の流動状態を詳細に把握するために、今年度も引き続き、HJBを模擬した透明プラスチック(ポリカーボネート)製フローティング・リング(CFR)を用いて、リングすきま内のリセスからの湧き出し流とジャーナルの回転によって誘起された回転流との干渉状態を観測する可視化流動試験を行った。流動特性に及ぼすリセス形状の影響をリセス前縁後退角とその幾何形状に分けて評価するため、前縁と後縁が半円状である若葉マークリセスを持つ2種類のCFRを対象に、液体窒素を作動流体とした45,000 rpmまでの回転試験を行った。また、前縁・後縁ともに三角状の突起か半円状の突起である円周方向に対照なリセスを持つ2種類のCFRについても同様な試験を行った。 リセス形状に関わらず高速回転域では、粘性摩擦発熱と圧力降下によりすきま内に気液二相流状態、すなわちキャビテーションクラウドが発生することが確認された。画像データから求めたキャビテーション領域占有率と計測データから求めた流量係数を主要な評価指数として、リセス形状の影響を比較、検討した。その結果、流動特性の回転数依存性はジャーナル回転方向に対するリセス前縁後退角の影響を強く受けることが確認された。また、マイナスの前縁後退角を有するリセスでは流れの干渉に伴う昇圧効果が認められたものの、高速回転状態では圧力変動を引き起こす可能性も確認された。さらに、リセス前縁・後縁の幾何形状の影響も無視できないことが判明した。 実験結果と数値解析結果を比較することで、リセス形状の影響がキャビテーションクラウドの発生状態には顕著に現れるが、流量係数ではそれ程明確ではないことを、定量的に把握することができた。
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