研究概要 |
本研究の目的は,先進的な流れの制御によって乗用車やトラック車両などの空力抵抗をさらに低減するため,一般的な形状の物体周りの流れの制御に関する基礎理論を確立することである.そのためにまず圧力抵抗と流れ場の物理量との間の関係を数学的に定式化する.次にこの定式化に基づいて空力抵抗を最小とする制御入力を低次元モデル化手法,制御工学の理論,最適化手法,および流れの数値シミュレーション技術を総動員して求め,理論的なフィードバック制御則の構築を行う.さらにこのフィードバック制御の結果をもとに,センサを用いず,より実用化しやすいプレデターミンド制御手法を提案する. 本年度はその第1段階として基礎理論の整備を行った.具体的には,カノニカルな外部流である円柱周りの流れを取り上げ,円柱に働く抵抗を低減させるためにどのように流れ場を変えればよいかを数学的に定式化した.流体運動の基礎方程式であるNavier-Stokes方程式から出発し,円柱表面で計測可能な物理量と空間内の全運動エネルギー散逸の間に成り立つ恒等式を導出した.さらに,第2段階としてその恒等式と準最適制御理論を組み合わせることにより,運動エネルギー最小化を目的とした制御則を導出した.円柱周り流れの直接数値シミュレーション(DNS)にこの制御則を適用した結果,良好なエネルギー散逸低減効果が得られることが確認された(Naito & Fukagata, Phys. Rev. E, submitted). 壁に沿う乱流の摩擦抵抗低減に関しては,以前より研究を行っていた進行波状壁面変形をスパン方向に適用したDNSを行い,その抵抗低減メカニズムを説明した.しかし主流方向進行波よりは制御効果は得られないことが分かった(Tomiyama & Fukagata, Phys. Fluids, 2013). また次年度以降の準備として,角柱周りの流れや翼周りの流れに関する予備的な数値シミュレーション及び風洞実験を実施した.
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