研究課題/領域番号 |
25420138
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
屋代 英彦 独立行政法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 主任研究員 (30358197)
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研究分担者 |
欠端 雅之 独立行政法人産業技術総合研究所, 電子光技術部門, 主任研究員 (70356757)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | レーザー誘起ブレークダウン / エアロゾル / 液滴 / 数密度分布 / 絶対数密度測定 |
研究概要 |
レーザー誘起ブレークダウンを用いてエアロゾル中の液滴数密度の絶対値測定が可能である事を実証している。この方法はナノ秒の時間分解能を持ちディーゼルエンジン内に間欠放出された液滴数密度計測が可能で燃費向上に貢献できると考えている。しかし、密度分布測定で増える測定点による測定時間の長時間化が大きな問題である。解決策として高繰返しレーザーの使用もしくは複数分岐したレーザー光を各々の測定点に同時照射することで対応可能である。一方、前のパルス照射によるブレークダウンで発生、膨張したアブレーションプルームは照射位置の測定点並びに近接測定点の数密度を過渡的に変化させる。そのためプルームの時間的、空間的影響を求めることで最適レーザー照射条件が把握でき密度分布測定時間の大幅な減少が期待される。 25年度までにアブレーションプルームによる数密度の過渡的変化の回復時間、大気中での最大膨張距離を密度計測により評価した。数100μsの回復時間からkHzの繰返し周波数レーザーの使用、密度変化の最大膨張範囲から数100Hz以下の低繰返しレーザーでは複数点で同時に密度計測が行えることがわかった。 この現象を利用し25年度は10Hzの繰返し周波数を持つレーザー光を10㎜間隔の5行5列25点に格子状に照射可能なフライアイレンズによりエアロゾルに照射した。複数点のブレークダウン発光を測定可能とするレーザーと同期したCCDカメラによる測定光学系の構築及び評価プログラムの製作をおこなった。複数の測定点ではレーザービームの空間的強度分布により高精度の密度分布測定には至らなかった。このため、各測定点での強度を均一にできる回折光学素子(DOE)を設計製作した。この光学系は焦点距離300㎜の集光光学系と同時に使用した場合、6行6列36点に3㎜離れた位置に格子状に集光することが可能であり26年度以降の照射実験に用いる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先行した実験結果もありブレークダウンに伴い発生するアブレーションプルームの時間空間的影響を明瞭に求めることができた。エアロゾルの供給条件にも依存するが流速が約18.5m/sの速度の場合、レーザー繰返し周波数に依存せず測定点を空間的に4㎜以上離すか、レーザー照射間隔を150μs以上とすることでアブレーションプルームの影響なく測定時間の解消につながることが判明した。また、これらの結果から2kHz以下の低繰返し周波数レーザーの場合、測定点の距離に依存せず複数点への同時照射でアブレーションプルームの影響が全くないことも分かった。この結果を受けて10Hzの低繰返しレーザー照射ではビームを分離して複数点の同時照射が可能であり、照射光学系設計の具体的な進展につながった。当初、複数測定点への照射光学系としてフライアイレンズを導入したが、拡大されたレーザービームの空間的強度分布の違いから高精度の密度分布測定には至っていない。しかしフライレンズを利用してレーザーと同期したCCDカメラにより複数点で発生したブレークダウンの計測が可能なシステムを構築した。さらに複数点で生じたブレークダウンの画像を100枚以上画像処理を行う解析プログラムを作成し実際に適応した。 フライアイレンズによる照射光学系では分離したレーザービームの不均一性さから高精度の空間分布が得られないが、回折光学素子(DOE)を用いることで均一な強度に分離できることが分かり、焦点距離300㎜の集光光学系と併用した場合、3㎜間隔で格子状の36点に分離できる光学素子を設計製作した。26年度はDOEを用いて分離した複数レーザービームによる密度測定を行い、空間密度分布測定に取り組む。
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今後の研究の推進方策 |
当所予定の26年度以降の計画の一部を先行して進めることが出来、均一強度に複数点で集光可能な光学素子を導入して密度分布の絶対値測定を進める。これらの複数点の測定値からエアロゾル中の液滴密度の二次元密度分布の測定を行う。一方、二次元的密度分布を測定することが出来ても、多数点からなる高精細分布、三次元分布、誤差の少ない高精度測定、高時間分解測定等を行う場合、桁違いに測定時間が増加することが予想される。本件で行っている解決策を実施した場合でも測定時間は非現実的な時間でなくなることが予想される。一方、密度分布の測定方法としてシート状に拡大した可視域のパルスレーザーを垂直方向から照射することで1ショットでも散乱像から密度分布を行う方法がある。絶対値測定で無い事、エアロゾル中の散乱によるレーザー強度損失、散乱係数の粒子径依存性、各測定点からCCDへの散乱角度依存性等の問題点がある。しかし、レーザー誘起ブレークダウンで得られた各点の測定結果を散乱計測で得られた分布図に各々標準として与えることで、問題点は解消されエアロゾル中の液滴密度の三次元測定など非常に長時間かかる測定の大幅な時間短縮が行える可能性がある。このため、この二つの方法を合成した測定方法の可能性を比較検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度に行った実験結果から光学物品として100万円を超える物品が必要となることが判明した。その設計仕様決定のため時間を費やし消耗物品の使用が抑えられたため多少の残金を残す結果となった。 残金は実験遂行のための消耗物品としての光学物品、画像機器等の消耗物品の購入に充てる予定である。
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