研究課題/領域番号 |
25420139
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
池田 友明 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 航空本部, 研究員 (00443276)
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研究分担者 |
跡部 隆 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 航空本部, 主任研究員 (80358663)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 空力音響 / 低レイノルズ数 / 翼設計 |
研究概要 |
本研究では、低レイノルズ数翼周り流れの非定常変動メカニズム解明という流体物理的課題と、非定常変動を考慮に入れた翼型設計手法の提案という工学的課題に取り組んでいる。これは過去に若手研究(B)の枠組で行っていた、低レイノルズ数翼の非定常空力特性に関する研究の発展である。 初年度は、レイノルズ数10,000, マッハ数0.2において、翼キャンバに関する音響変動受容性を明らかにする目的で三次元数値計算を行った。これは、以前若手研究の枠組で行った翼形状に関する二次数値計算パラメットリックスタディーの追跡調査である。キャンバを前縁側に付けると、前縁で受用された変動の成長が抑制され全面剥離が起きやすくなるが、キャンバを後縁側に置き前縁側をフラットに取ると、剥離剪断層で三次元的な縦渦が成長し再付着を促す。この結果、翼上面側で層流剥離泡が形成され、空力性能が大幅に上がる。成果は国際会議で発表し、査読付きの国際誌へ投稿準備中である。 さらに、空力音が翼の空力性能向上に寄与することを実験的に証明することを目的として、翼弦長の異なるNACA0006翼型に対して、同レイノルズ数で異なるマッハ数の流れを作り出し、翼の空気力を測定した。実験には首都大学東京の低乱・低騒音風洞を用いた。マッハ数がより大きく空力音が観測されるケースで、マッハ数が低く空力音が観測されないケースよりも揚力傾斜が高い測定結果が得られた。この成果は国際会議で発表した。 また、同じく若手研究の枠組で行った、東北大学火星大気風洞を用いた実験について、翼後流の渦変動が音響的なフィードバックに起因していることを示す実験結果を整理し、流力講演会にて発表した。NACA0012翼模型の埋め込んだKuliteセンサで得られる圧力変動と、熱線流速計で測定した翼下流の速度変動の相関に着目し、フィードバックループの存在を示唆する結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は音響フィードバックループの発現による翼の空力特性改善メカニズム解明に注力して研究を行った。特にキャンバ位置と音響変動の受容性についての成果は、翼型設計に直接通じる重要な指針である。また、実験的に音響フィードバックループの存在が空力特性の向上に寄与するデータを取得できたのは、エクストラサクセスと言える。現在、より工学的な見地から、低レイノルズ数の翼型設計手法の提案に直接寄与する研究は進捗が遅れているが、次年度以降は精力的に取り組み、研究を加速させる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に得られたキャンバ位置と音響変動の受容性についての数値計算の成果は、次年度以降に風洞実験による確証を得たいと考えている。東北大学火星大気風洞を使って、低レイノルズ数・高亜音速環境での揚力・圧力分布の計測を行いたい。また、初年度のNACA0006翼型の実験結果については、数値計算による詳細な解析を予定している。さらに、今年度からは翼型最適化手法の導入による設計手法の研究を開始する。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度は数値計算に注力し新たに風試模型を作成しなかったため、その分の予算が余った。 次年度以降、初年度に実施した数値計算の成果を実験で確認する予定であるため、新規に模型を作成する必要がある。その模型作成及び実験に予算を充てる。
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