研究実績の概要 |
本研究課題では、低レイノルズ数翼周り流れの非定常変動メカニズムを考慮に入れた翼型設計の研究というテーマで3年間の研究を実施した。低レイノルズ数翼においては剥離泡スケールの空間変動を伴う非定常流れが卓越する。ここでは数値計算手法と風洞実験の両面からこの変動発生のメカニズムとそのレイノルズ数依存性を明らかにし、その過程で得られる知見を翼設計手法にフィードバックすることを目差した。 最終年度である本年度は、昨年度実施したRe=50,000における翼後縁ノイズと空力性能の相関に関する風洞実験のポスト処理と数値計算を追加で実施し、ノイズの周波数特性に関して定量的な議論を行い国際会議で口頭発表を行った。また、本数値計算研究で用いているマルチブロック法の精度向上について検討し、粘性項評価の改良に関して国内会議で発表した。さらに研究分担者の研究テーマとして、周期的な非定常変動の特性を定量的に評価するためFloquet理論をベースにした線形安定性解析手法を構築中である。基礎的な二次元流に適用する場合、非定常流れの周期や振幅などによって変動の時間発展が促進もしくは抑制され、翼上面側の乱流遷移に影響を与え得ることが示唆された。成果は国際会議で口頭発表を行った。 研究期間を通じた全体の総括としては、本テーマがリンクしていたJAXAを中心とした火星探査プロジェクトが一旦白紙になったため研究計画を軌道修正する必要が生じ、東北大学火星風洞と連携した実際的な翼型の提案に繋がる研究は停滞したが、Re=10,000における翼型の音響変動と空力性能向上に関する数値計算研究がAIAA Journalから出版されるなど、低レイノルズ数翼設計指針に関して一定の成果を上げることが出来た。
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