研究課題/領域番号 |
25420142
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
柴田 元 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70613785)
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研究分担者 |
小川 英之 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40185509)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 燃料 / 着火性 / 予混合圧縮着火 / 次世代エンジン / オクタン価 / 着火指標 |
研究概要 |
本研究では,最新の次世代内燃機関に適した燃料の着火指標を構築することを目的とする.平成25年度においては,予混合圧縮着火により燃料を構成する個々の炭化水素の着火性を評価した.燃料はベース燃料にオクタン価50のPRF50を選び,それに20容積%添加した単一炭化水素で予混合圧縮着火させ,着火するクランク角度から20%追加した炭化水素の着火性を求め,それを相対的着火性(HI index)として定義した.平成25年度はパラフィン系炭化水素4種類,ナフテン系炭化水素3種類,芳香族系炭化水素6種類について実験を行った.炭化水素の着火性は,①温度,②反応時間,③酸素濃度により変化する.このため,実際のエンジン実験では①に対してはヒータにより混合気の初期温度(吸気温度)を,②に対してはエンジンの回転速度を,③に対してはEGRにより酸素濃度を変化させて実験を行った.実験の結果,パラフィンの相対的着火性は吸気温度,回転速度,酸素濃度に対してほとんど変化しないが,ナフテン系炭化水素では例えば吸気温度を上げると相対的着火性が悪くなる結果を示した.従来のガソリンエンジンではナフテン系炭化水素は着火雰囲気温度が高くなると着火性が改善される傾向があり,この点が従来のオクタン価が次世代エンジンの着火性評価に使えない理由であると考えている.また,芳香族系炭化水素ではベンゼン環があることが着火性を著しく悪くしている結果となっている.また構造異性体であるオルトキシレンとメタキシレンではオルトキシレンのほうが①から③のいずれの条件に対しても著しく着火性に優れており,構造による影響(側鎖の位置や長さの影響)が大きいことが示唆された.なお,本内容は平成25年に内燃機関シンポジウムで発表された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在の研究の進捗率は全体の40%程度であり,実験の進捗に関しては概ね予定通りである.パラフィン系,ナフテン系,芳香族系炭化水素の着火性についてはほぼ実験が終了したが,実験を続けていく中で,環の構造の違いや側鎖の影響など新たな発見があり,これらの影響について調べる追加実験を行うこととした.またオレフィン系炭化水素および含酸素燃料の着火性については引き続き今年度の実験の中で継続していくことを考えている.また,実験と同時に計算による着火時期の予測(Livengood-Wu積分)なども検討している.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の実験に引き続き,オレフィン系炭化水素と含酸素燃料(アルコール類やエーテル類)の着火性について吸気温度,エンジン回転数,吸気酸素濃度をパラメータに実験を継続する.また,これまでの実験の結果によれば,炭化水素の構造が酸化過程における燃料の分解に関与しており,温度,反応時間,酸素濃度により反応速度が変化しているものと考えている.もしこの考えが正しいのであれば,オクタン価は数ある着火条件の中の一条件ということになり,オクタン価と炭化水素の構造から着火に影響を強く与えている影響因子を統計的に探索し,このパラメータを用いて今まで本実験で計測された着火のデータを整理した際にパラメータの係数がどのように変化するのかを調べれば,着火条件が燃料の着火性に与える影響を把握することができるようになる. また,これまでの実験データではナフテン系炭化水素に関しては環の大きさ(何個の炭素で構成されているか)と側鎖の長さが長くなるほど着火は良くなる傾向が見られるが,芳香族系炭化水素では側鎖が小さいトルエンやエチルベンゼン,プロピルベンゼンなどでは着火性の差異はほとんどない.恐らく環構造の分解には側鎖の長さも関与していると考えられる.つまり環構造が弱いナフテン系炭化水素では側鎖が短くても開環反応が起こるが,環構造が強い芳香族系炭化水素では側鎖が十分に長くないと開環反応が起こりにくいと考えられる.またメタキシレンとオルトキシレンのように,側鎖の位置に対しても着火性に影響があるため,今後は側鎖の長さと位置が着火性に与える影響についても検討を行なう.さらにナフテンに関しては環の大きさと着火性の影響も調べる. これらの実験データをまとめて,平成26年秋に国際学会で発表することを予定している.
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次年度の研究費の使用計画 |
2014年4月17日現在において約160万円を消費し、2014年4月7日から13日の間に本研究の調査に関する海外出張を行なったため、実質のところ約200万円を消費した状況にある。科研費を使用するのが今回が初めてであり、赤字を出さないように大事に使用していることと、使用している炭化水素(薬品)は高価であるため、実験結果に応じて厳しく選定をしながら使っているのが実情である。3年間で使用するため、500万円を3で割ると年間約160万円となり、使用のペースとしては妥当であると考えている。 2014年度秋に本研究を海外で本研究成果を発表する予定がある。また実験装置でデータロガーを含む計測装置、エンジン部品などを今年度は購入する。さらにオレフィン系の炭化水素やナフテン系の炭化水素は分子量が大きいほど高価であるため、実験の進捗を鑑みて、実験で使用する炭化水素を慎重に選定したい。また、今年度はデータベースの構築と燃焼のシミュレーションなどにも取り組むため、解析装置を購入する予定にしている。
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