研究課題/領域番号 |
25420143
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
廣田 光智 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50333860)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 熱工学 / 超音波 / 希薄燃焼 |
研究実績の概要 |
2系統の同じ周波数で得られる超音波の効果を融合させて,噴流バーナで形成される火炎において希薄燃焼限界(通常は燃料濃度が薄く火が消える)条件での安定かつ継続的燃焼を実現することを目的とする.1系統では限定されていた混合促進範囲をシステムの最適化で増幅し,さらに2系統並列で用いることでその範囲を拡大し,スケールの大きな火炎においても超音波が効果的に作用するシステムを構築する.これにより,木質バイオマスのガス化炉などで必要な継続的な超希薄燃焼の実現を目指す. 平成26年度は,1系統の振動システムの問題点を解消し, 2系統の振動システムを用いて円形の噴流コアを中心方向へ大きく変形させることが,主な目標であった.1系統の振動システムで電源とのマッチングを最適化した.流速を上げて火炎が吹き飛ぶ限界と,流速を下げて火炎がバーナリムへ再付着する限界との間を,安定範囲とした場合,バーナ直径が2mmのノズルでは,振動システムへの印可電圧が50Vまでは安定限界は大きく変わらない.それ以上の印可電圧では安定範囲が拡大する.特に75V以上では,火炎は再付着せずに安定範囲が急激に大きくなる.燃料流速が大きいほど少ない印可電圧で安定範囲の急拡大が起こった.また,燃料噴流の垂直断面をアセトン平面レーザ誘起蛍光法(アセトンPLIF法)の結果では,印可電圧が大きいほど混合が促進した.さらに照射方向が同じ高さで互いに直角に交差するように2系統の振動システムを設置し,安定限界を測定した.超音波の効果が強いため,空気流速を小さくすると,火炎は再付着せず消炎する.直径2mmのノズルと比べ,直径10mmのノズルを使用した場合,噴流せん断領域で流れが乱流に遷移しやすいことから,火炎の安定範囲を拡大できる燃料流速は非常に小さい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の実施計画は,1)1系統の振動システムの電源とのマッチング不足を解消し,かつ直径2mmとともに直径10mmのノズルを使用して形成される火炎に対して超音波を作用させる,2)2系統の振動システムを同時に稼働させて効果的な照射位置を調査するとともに安定範囲の拡大を狙う,3)アセトンPLIF法などで火炎付近の構造を可視化し,振動システム照射による混合促進の様子を診断する,4)CFDを用いて圧力変動と燃料の混合の関係を調査する,の4つの項目を達成することを目標とし,5)随時,各項目の進捗状況を精査して補足実験を行うこととしていた.1)および3)は,概ね達成した.特に当初の目標である,噴流断面積を超音波によって25%程度変形させることは直径2mmのノズルでは1系統の振動システムですでに達成した.ただし,直径10mmのノズルにおいて燃料流速の大きい場合,1系統の超音波では火炎に及ぼす影響が弱く,効果が明確でないことがわかった.この点は2)の結果と関連がある.すなわち,2系統の振動システムを同じ高さで照射方向が直角になるように交差させて,その交差点を噴流に作用させた場合,火炎に及ぼす影響が強くなることが確認できた.火炎が不安定であること,2系統の交差方向には検討の余地があることなどから,次年度においても継続的に精査する予定である.さらに4)のCFDは,市販の汎用コードを用いて流れ場全体に圧力変動を作用させ,その周波数が大きくなるほど噴流後流の混合が促進されることを確認した.ただし,振動周波数が100Hz程度と低いこと,実際の実験とは異なるシンプルなモデルで計算したことなどから,次年度においても継続的に精査する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の実施計画は,1)直径2mmのノズルを用いて2系統の振動システムの照射方向を変化させ,火炎の安定性への影響を調査するとともに,火炎構造の変化をアセトンPLIF法などによって可視化し,混合促進度合いを調査する,2)直径10mmのノズルを用いて2系統の振動システムを作用させた場合,火炎の安定性および火炎構造への影響を,1)と同様に調査する,3)CFDにおいてより現実に近いモデルとするため,計算ドメインや周波数などを変更する,の3つの項目を達成することを目標とし,4)随時,各項目の進捗状況を精査し補足実験を行う.
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