研究実績の概要 |
自己組織化単分子膜(self-assembled monolayer, SAM)は,固体表面の修飾技術として広く研究が進んでおり,表面の物理化学的特性を分子スケールから柔軟に制御する技術として応用が進んでいる.本研究では,分子動力学シミュレーションを用いて,SAMを介した熱物質輸送機構を明らかにすることを目的とし,分子スケールから新規的な界面修飾材料をデザインする際に有用となる分子レベルの設計指針を模索することを目標に研究を行っている.特に,SAM修飾の対象として工業・産業応用に際し有望な固体基板材料やSAM分子の模索を行い,SAM修飾表面と溶媒との組み合わせに対し,界面における熱輸送効率を明らかにした.ここでは熱伝導材料として一般的に使われている銅やアルミニウムの固体基盤を採用し,水溶媒との間に形成される界面での熱輸送効率(界面熱抵抗)を調べた.また,SAM分子として熱的・化学的安定性に優れるフルオロカーボン系のSAMを介した界面熱輸送特性も検討した.フルオロカーボン素材は,冷媒としても広く利用されており,今後の工業・産業応用の観点から有用性が高いと考えられる.これらの研究を通じて,界面熱抵抗低減の目的でSAM修飾を適用するかどうかは,用いる溶媒や固体表面の種類によって選択する必要があること,フルオロカーボン系など親和性の低い媒質間の熱輸送効率を向上するためには,親和性改善のための分子選択・分子デザインを必要とすることが明らかとなった.
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