研究課題/領域番号 |
25420148
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
古畑 朋彦 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (80261585)
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研究分担者 |
座間 淑夫 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (30594113)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 燃焼生成物 / クエンチング / 粒子状物質 / 多環芳香族炭化水素 / 未燃炭化水素 / ディーゼルエンジン |
研究実績の概要 |
小型ディーゼルエンジンでは,噴霧火炎が燃焼室壁面に到達しクエンチングが生じ,これが未燃炭化水素の排出や壁面へのデポジットの付着につながっていると考えられる.そこで本研究では,その基礎研究として炭化水素燃料の層流拡散火炎に壁面を挿入することにより,その際に壁面に付着するデポジットや,衝突前後での燃焼ガス組成ならびに燃焼ガス中に含まれる粒子状物質(PM)を分析することにより,各種燃焼生成物の生成挙動に対する壁面によるクエンチングの影響を調査する.平成25年度には安定した火炎の形成方法や燃焼ガス分析方法を確立したことから,平成26年度は軽油の層流拡散火炎に金属板を挿入し,火炎の温度分布,ガス組成分布ならびにPM濃度分布の計測を行い,金属板を挿入しない火炎における分布との比較を行った.その結果,火炎中に壁面を挿入した場合,壁面近傍のみならず,火炎のより上流側まで温度が低下することが明らかとなった.これは火炎から低温の壁面へのふく射熱損失のためであると推察された.さらに,火炎上流部で炭化水素および一酸化炭素の濃度が増加し,火炎下流では二酸化炭素濃度の減少と酸素濃度の増加が確認された.これは壁面を挿入したことにより燃焼反応が抑制されたことを示していると考えられる.また,火炎中流部から壁面近傍にかけて粒子状物質(PM)が増加することも明らかとなった.さらに,PMの前駆物質である多環芳香族炭化水素(PAH)の濃度分布をガスサンプリングとガスクロマトグラフにより測定した結果,ベンゼン,トルエン,ナフタレン,ブチルベンゼンといった分子量の小さな芳香族炭化水素の濃度が壁面の挿入により増加することがわかった.これは,燃焼反応が抑制されたことにより,PAHの多環化が抑制されたためではないかと推察された.また,本実験では火炎に対する壁面の挿入高さも変えて同様の計測を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度は軽油の層流拡散火炎を対象として,火炎に金属板を挿入した場合の温度分布や各種化学種の濃度分布を計測することに成功し,金属板を挿入しない火炎との分布の差異を明らかにすることができたが,火炎からのガスサンプリングを行う際に,サンプリングプローブの粒子状物質による閉塞が頻繁に生じてしまい,その対応に時間を要したことから,当初予定していた挿入する壁面温度の火炎に対する影響は調査できなかった.また,計画では軽油以外の炭化水素燃料も用いて同様の実験を行う予定であったが,こちらも着手することができなかった.以上から「(3)やや遅れている.」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,挿入する金属板の温度を変えて実験を行い,火炎の温度分布や各種化学種濃度の分布の変化に対する壁面温度の影響を調査する.始めに挿入する金属板の大きさを変えて,金属板からの放熱量を変えることにより金属板の温度を制御できるかどうかを検討する.金属板の温度は熱電対や放射温度計により計測する.また,水冷あるいは油冷により壁面温度を制御する方法についても,内部に冷媒を流通させることのできる壁面や冷媒の循環装置の設計および製作を行い,実験に使用する.さらに軽油以外の燃料として,例えばプロパンなどガス燃料の層流拡散火炎についても測定を行う.ガス燃料の場合,生成する粒子状物質の量は軽油に比べて少なく,ガスサンプリングプローブの閉塞は起こりにくいと考えられる.測定結果を軽油の場合と比較して,壁面によるクエンチングに対する燃料種の影響を議論する.
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