研究課題/領域番号 |
25420156
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
小泉 安郎 信州大学, 繊維学部, 特任教授 (20215156)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 核沸騰熱伝達 / プール沸騰 / ナノ粒子 / 限界熱流束 / 赤外線カメラ / 熱工学 |
研究実績の概要 |
銅プリント基板製の10 mm×10 mm伝熱面を用い、大電流を直接通電して加熱し、圧力0.1MPaの下でプール沸騰熱伝達実験を行う。電流、電圧と求まる銅電気抵抗から、伝熱面熱流束と伝熱面平均温度を求める。更に、伝熱面中央の裏面ベークライトを径6 mm円形に取り除く。この部分の伝熱面裏面温度を赤外線放射温度計を用いて撮影測定する。これにより、伝熱面温度を、瞬時、局所の温度を面の広がりとして、時系列的に測定する。実験は、径25 nmのTiO2ナノ粒子を0.01 wt%迄の範囲で懸濁させた流体、及び清浄純水を試験液とする。高速度カメラにより沸騰状況を撮影する。近接してセットにしたマイクロ熱電対を伝熱面近傍に入れ、液温度と、相関法により液体流速を求める。以上から、ナノ粒子懸濁率と限界熱流束向上化の関係、また、それをもたらす三相界線密度、伝熱面上液幅(三相界面)と薄液膜部広がり幅との関係を把握する。合わせて、沸騰素過程に関する諸情報を入手する。 平成25、26年度は清浄純水による比較基礎プール沸騰実験を主として実施した。 低熱流束時の孤立気泡沸騰領域では、伝熱面からの熱は相変化で約2割、対流で約8割の伝熱割合であり、対流伝熱の重要性を確認した。中熱流束域、限界熱流束域において、面温度変化から、面熱流束分布の時系列的変化を求めることができた。従来言われているような三相界線の存在を限界熱流束点では確認できなかった。また、沸騰気泡域と平均伝熱面熱流束の差は、従来言われているほどの大きさはない事を確認した。限界熱流束点では、始めに伝熱面のある部分に小さな高温乾き面が現れ、それが拡大、縮小を繰り返しつつ次第に大きくなり、ついには伝熱面全体に高温乾き面が一気に拡大し、伝熱面の物理的焼損に至る、一連の過程を把握することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は順調に進んでいる。本研究の特徴である、或る面の広がりとして瞬時局所の測定をなし、伝熱主要部分の明確化を進めることができている。従来知見とは異なる新たな発見を為すことができている。 成果を、2014年8月10日~15日に京都において開催された第15回国際伝熱会議で、また、同じく2014年11月14日~20日、カナダ モントリオールで開催される米国機械学会の2014年International Mechanical Engineering Congress and Exhibitionで、講演発表を行った。更に、2015年4月26日~29日、米国ボウルダー市で開催予定の第9回沸騰と凝縮熱伝達国際会議で、また、2015年6月3日~5日に福岡国際会議場で開催予定の第52回の本殿熱シンポジウムで、講演発表を予定している。十分まとまった講演発表ができるまでに、研究を進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に引き続いて、実験を実施する。結果が出次第、学会、学術誌への公表に努力する。具体的実験は、26年度同様、以下に示す通りである。 (1)ナノ粒子混入によるプール沸騰限界熱流束向上実験 ナノ粒子濃度は、0.0005 ~ 0.01 wt%の範囲5種類とする。鏡面仕上げシリコンウエハー上にナノ粒子懸濁液の液滴を置き、画像撮影を行い、液表面張力を求める。次に、熱流束5×105 W/m2の範囲まででナノ粒子予備沸騰実験を行い、伝熱面上にナノ粒子析出層を形成させる。次いで、本実験を実施する。限界熱流束発生点まで実験は行う。実験終了後、伝熱面を取り出し、伝熱面上にナノ粒子懸濁液の液滴を置き、画像からその面上液接触角を確認する。 (2)清浄純水による比較基礎プール沸騰実験 試験液を清浄純水として、プール沸騰実験を行う。まず、試験液滴を伝熱面上に置き、画像撮影を行い、液表面張力、接触角を算出する。プール沸騰実験は、熱流束を階段状に上昇させて進め、各ステージで、前記測定を行いながら、限界熱流束発生点まで行う。実験終了後、伝熱面を取り出し、伝熱面上に試験液の液滴を置き、画像からその面上液接触角を確認する。27年度は特に、気泡挙動と伝熱面温度変動との関係について注目し、解析を進める。高速度カメラ撮影を伝熱面温度測定と同期させて行い、気泡形状と面への接触状況の変化が、伝熱面温度及び熱流束の変化にどのような影響を与えているか、実験的に確認する。これまでの多くの理論では、沸騰素過程の内三相界線付近の伝熱が支配的であるとされてきているが、一方で液への対流伝熱と液-気泡界面蒸発が支配的であるとする考え方もある。これらの事へ、実験的確認結果を提示する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していた赤外線サーモグラフィーは、撮影速度が60Hzであり、性能的に不満足が危惧された。しかし、より高速撮影(120Hz)ができる赤外線サーモグラフィーを借りることができたため、業者からのリースが不要となり次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
実験を繰り返す内に、試験容器からの漏れが激しくなり、また試験装置の不具合箇所も幾つか出てきため、27年度、試験容器再作成を行う。26年度未使用繰越経費と27年度経費を合算して、試験容器再作成費に充てる。その他、実験実施のための物品・消耗品費、調査旅費、成果発表旅費、成果発表経費、報告書作製費への支出も予定している。
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