銅プリント基板製の10 mm×10 mm伝熱面に直接通電加熱し、圧力0.1MPaの下でプール沸騰熱伝達実験を行う。電流、電圧と銅電気抵抗から、伝熱面熱流束と伝熱面平均温度を求める。更に、伝熱面中央の裏面ベークライトを径6 mm円形に取り除く。この部分の伝熱面裏面温度を赤外線放射温度計を用いて測定する。これにより、伝熱面温度を、瞬時、局所の広がりとして、時系列的に測定する。ナノ粒子を懸濁させたナノ流体、及び清浄純水を試験液とする。高速度カメラにより沸騰状況を撮影する。以上から、ナノ粒子懸濁と限界熱流束向上化の関係、また、沸騰素過程に関する諸情報を入手する。 平成25、26年度は清浄純水による比較基礎プール沸騰実験を実施した。孤立気泡沸騰領域では、対流伝熱の重要性を確認した。三相界線の存在を限界熱流束点では確認できなかった。始めに伝熱面のある部分に小さな高温乾き面が現れ、それが拡大、縮小を繰り返しつつ次第に大きくなり、ついには伝熱面全体に高温乾き面が一気に拡大し、伝熱面の物理的焼損に至る、一連の過程を把握した。 平成27年度はTiO2ナノ粒子を蒸留水に添加したナノ流体(0.04 g/L,0.4 g/L,4 g/L)のプール沸騰実験を行った。実験後伝熱面上には、ナノ粒子の析出層が形成されていた。析出層厚さは10数μmと薄く、析出層表面には幅数μm、深さ5~10μmの不規則な多数の溝が認められた。核沸騰熱伝達率は蒸留水の場合に比べて低下していた。一方、限界熱流束は、蒸留水の場合に比べて向上していた。伝熱面に局所的に乾き面が発生し、拡大して伝熱面焼損は発生していた。但し、蒸留水の場合に比べ、乾き伝熱面拡大領域は狭く、短時間に焼損に至っていた。ナノ粒子析出層表面に形成される無数の微細溝によって、乾き面形成拡大が抑制され、限界熱流束は向上化したものと考えられる。
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