研究課題/領域番号 |
25420160
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
北川 石英 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (80379065)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 気泡運動制御 / 機能面 |
研究概要 |
「気泡」は,スケール別に,超微細な「マイクロバブル」から大変形を伴う「ミリバブル」に分類され,現在,機械・化学・船舶・医療の分野において盛んに利用されている.このような状況のもと,多くの場合では,壁面近傍の気泡挙動が,利用効果や機器性能に直接的影響を与える.このため,壁面近傍気泡挙動の人工的制御が可能となれば,気泡注入効果のさらなる向上が期待できる.本研究では,気泡の運動特性に対する壁面傾斜角度および壁面濡れ性の依存性を調査するために,傾斜壁面近傍を上昇するミリメートルサイズの気泡群に対して画像処理を用いた気泡径および気泡速度計測を行った.実験では,表面の濡れ性を変化させるために,アルミニウム板の熱水処理法を用い,アルミニウム表面性状のチェックには,走査型電子顕微鏡とX線回折装置を利用した.また,壁面傾斜角度を20, 40°とし,濡れ性の異なる面として超親水面(接触角5°)および疎水面(接触角80°)を用いた.その結果,以下の知見を得た.(1)壁面近傍では,超親水面の場合の気泡存在頻度が,疎水面の場合のそれに比して高くなる.この傾向は,傾斜角度が高いほど顕著になる.(2)いずれの傾斜角度においても,壁面が超親水面の場合の気泡上昇速度は,疎水面のそれに比して高い.これは,気泡存在頻度分布と密接に関係する.(3)超親水面の場合では,疎水面の場合に比して,壁垂直方向の気泡運動が抑制される.これは,傾斜角度が低いほど,また,壁遠方ほど顕著となる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アルミニウム板の熱水処理法を利用することにより,親水面および超親水面の作成に成功し,壁面スライド気泡の運動特性に対する壁面傾斜角度および壁面濡れ性の依存性を明らかにすることができた.しかしながら,アルミニウム板の浸漬時間依存性を調査した結果,熱処理をしない状態のアルミニウム板の表面性状が水中で親水化傾向を示すことが明らかとなった.そこで,本年度は,その影響を軽減するために,アルミニウム表面にカプトンテープを貼り付けた.このため,当初目標としていた,疎水面と超親水面を組み合わせた機能面の創製まで至ることができなかった.
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今後の研究の推進方策 |
現在使用しているアルミニウム板に浸漬時間依存性があることを十分に考慮し,アルミニウム板の化学成分の変更や,撥水スプレー・撥水塗料の利用等により,水中にて安定した表面性状を有する疎水面の作成を試みる.撥水塗料などを使用する際には,機能面を作成するためのマスキング方法を考案する.また,二相自然対流場の高精度温度・速度同時計測に関しては,気泡が壁面近傍にて密集した場合(特に疎水面を利用した場合),個々の気泡の区別が困難となることが予想される.この場合には,シート状のグリーンレーザーを利用し,気泡界面での反射光の情報から,気泡の位置および数密度を算出する実験と,バックライト法による気泡投影像から,気相面積率を算出する実験を行い,両者の結果を比較することにより,その妥当性を評価する.
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次年度の研究費の使用計画 |
アルミニウム板の浸漬時間依存性に伴い,当初予定していたナノ構造機能面の創製に至らなかったため. 前年度の未使用金を,アルミニウム板の化学成分を変更した特注品の購入と,耐水性の極めて高い撥水スプレー・撥水塗料の購入に使用することにより,水中で安定した表面性状を有する疎水面および,ナノ構造機能面を創製する.
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