「気泡」は,スケール別に,超微細な「マイクロバブル」から大変形を伴う「ミリバブル」に分類され,現在,機械・化学・船舶・医療の分野において盛んに利用されている.このような状況のもと,多くの場合では,壁面近傍の気泡挙動が,利用効果や機器性能に直接的影響を与える.このため,壁面近傍気泡挙動の人工的制御が可能となれば,気泡注入効果のさらなる向上が期待できる.H27年度では,下向き傾斜伝熱面に沿う自然対流気液二相流のマルチスケール解析および,局所的に濡れ性が異なる機能面を伝熱面として利用した場合の自然対流気液二相流の温度計測を行った.前者では,親水性を有する伝熱板の傾斜角度φがφ=40°,気泡流量Qが0<Q<200 ml/minの範囲において,一方,後者では,機能性を有する伝熱板の傾斜角度がφ=20°,気泡流量がQ=100 ml/minの範囲において,以下の知見を得た.(1) いずれの気泡流量においても,気泡注入によって熱伝達率が著しく増加し,気泡注入時の熱伝達率と気泡非注入時のそれとの比は4.3-6.3となる.また,気泡流量の増加に伴い,熱伝達率は単調に増加する.このため,本実験条件下では,気泡注入および伝熱面の表面性状が自然対流熱伝達の促進に対して有効に機能すると言える.(2) 気泡流量の増加に伴い,伝熱面近傍での上昇気泡の運動および液体上昇流により誘起された非定常渦の運動が顕著となる.これらは伝熱面近傍での高温液体の下流への熱輸送と伝熱面垂直方向の熱交換を活発化させるため,熱伝達の向上に寄与する.(3) 気泡注入時では,機能面を利用した場合と利用しない場合の熱伝達率の比が,層流域において1.02-1.05となる.これは,局所的に存在する撥水領域に気泡がトラップされた結果,気泡の壁遠方方向への拡散が抑制されるためである.
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