研究課題/領域番号 |
25420163
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
宮崎 隆彦 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (70420289)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 吸着式ヒートポンプ / ガス吸着 / 活性炭 / 低GWP冷媒 |
研究概要 |
本研究は,活性炭による超臨界状態のガス吸着現象に着目し,超臨界温度における吸着特性の把握および吸着熱の測定,さらに,吸着熱を利用したヒートポンプ動作の理論解析を目的としている。平成25年度は,容量法を用いた低圧の吸着量測定と物質移動特性の解析,さらに重量法による高圧の吸着量測定と物質移動特性の解析を行う予定であった。容量法による吸着量測定と物質移動特性の解析については,ほぼ予定通り進行し,1報の国際会議論文と1報の国内学会講演論文として成果を発表した。一方,重量法による高圧の測定については,装置の立ち上げが遅れ,H25年度中の測定はできなかった。 容量法の装置では,地球温暖化係数が従来の冷媒と比較して約三分の一である冷媒R32および同様に十分の一以下であるR1234ze(E)を用い,パウダー状活性炭に対する吸着量の測定を行った。それぞれの冷媒について,25℃~75℃,および30℃~60℃の温度範囲において,冷媒圧力1MPaまでの測定を行い,測定データからToth式による吸着等温線予測式を得た。また,得られた吸着等温線予測式を用いて,R32と活性炭を用いた吸着式冷凍サイクルの性能解析を行った。解析の結果,各種温度条件におけるCOPを予測するとともに,熱力学的サイクルの改良によるCOP改善効果を明らかにした。 さらに,吸着量の時間変化から吸着の動特性を解析した。吸着の時定数から物質移動係数を算出し,温度依存性を求めた。得られた物質移動係数に基づいて,吸着式冷凍サイクルの動的性能を予測した結果,R32と活性炭による吸着式冷凍サイクルのCOPは既存の吸着式冷凍機の三分の一程度であるが,単位吸着材重量当たりの冷凍能力はほぼ同程度の出力が期待できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は,容量法を用いた1MPaまでの吸着量測定と物質移動特性の解析,さらに磁気浮遊天秤式吸着量測定装置を用いた1MP以上の吸着量測定と物質移動特性の解析を行う予定であった。H25年度当初に容量法による吸着量測定装置を組み上げ,平衡吸着量の測定および物質移動特性を予定通りに実施できた。さらに,得られたデータを用いて吸着式冷凍サイクルの解析を行い,それらの成果を1報の国際会議論文と1報の国内学会講演論文として発表している。一方,重量法による高圧の測定については,高圧ガスの対応等に時間を要したため,測定を開始できなかった。しかし,H26年3月までに装置の立ち上げが完了し,H26年度当初から測定を開始できる状態にある。 以上のことから,当初の研究計画に大幅な変更は必要なく,おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,磁気浮遊天秤式の吸着量測定装置を用いてR32および二酸化炭素の平衡吸着量測定および吸着速度解析を行う。特に,超臨界温度において吸着量の測定および吸着等温式の提案を行い,超臨界温度を含めた吸着式ヒートポンプの解析に利用できるデータの整理を行う。さらに,吸着熱を測定するための熱交換器を製作し,超臨界温度における吸着特性と冷媒の熱物性の評価を行う。 取得したデータを整理し,吸着式冷凍サイクル,増熱型吸着式ヒートポンプ,昇温型吸着式ヒートポンプの理論サイクル解析を行い,性能予測およびサイクル改善による性能向上効果の評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初,国際会議での発表を予定していなかったが,H25年度の研究によって発表に値する成果が得られたため,H25年度末からH26年度に股がった国際会議(International Sorption Heat Pump Conference 2014)で研究発表を行うことにした。旅費の支出は平成26年度となるために,その分の予算を平成25年度予算から確保して,次年度に繰り越した。平成25年度に購入予定であった物品の一部は,研究室の現有のものを用いたため,研究の進捗状況にも影響はない。 繰り越した金額は国際会議の旅費として使用し,その他については当初の予定通り使用する。
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