研究課題/領域番号 |
25420164
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
西山 貴史 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80363381)
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研究分担者 |
高橋 厚史 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10243924)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナノバブル / 固液界面 / AFM / 撥水 / 親水 / HOPG |
研究実績の概要 |
25年度にはナノバブル計測に適したピークフォースタッピングという、原子間力顕微鏡(AFM)の新しい計測モードを習得することができた。今年度はさらにソルベントエクスチェンジ法(最初にサンプルをエタノールに浸漬し、数分後に水と置換する方法。空気の溶解度がエタノールと水とで大きく異なることを利用して、局所的な過飽和状態を生じさせる。)を採用することで多くのナノバブル生成に成功した。計測技術も向上し、より確実な計測が可能となった。 また、粗面化した銅の伝熱面上にFOPA単分子膜を作製し沸騰実験を行った結果、従来用いられているテフロン系の撥水面以上の発泡開始温度低減効果が見られたが、それと同時に沸騰に耐えるほどの密着性は備えていないことも判明した。 そこで他の材料を用いた実験にも取り組んでいる。主に用いたものはHOPG(高配向性グラファイト)というグラフェンが層状に重なった物質であり、原子レベルの平坦面を容易に得ることができ、水との接触角が80-90°というある程度の撥水性を有していることからナノバブル計測に適した材料である。HOPGを用いた実験により、生成するナノバブルはHOPG表面のステップ(高さがナノメートルオーダーの段差)を避けていることがわかった。そもそもAFMとは探針とサンプル表面との相互作用によって表面の幾何形状を計測するものであり、計測対象の物質を特定するには不向きな計測方法である。ただ、今回の実験結果については、HOPGのステップ部分は親水性であることが知られているため、AFMによって計測されるナノバブルが真に気相であることを示す根拠のひとつと成り得る。 また、AFMの探針による走査の影響でナノバブルの形状変化や合体が起こり、それらは半球状ではない形状となっても長時間安定に存在することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
銅の粗面とFOPA単分子膜を用いた沸騰実験の結果、発泡開始温度低減効果は持っているが耐久性は十分でないことがわかった。また、HOPG表面におけるナノバブル計測によりナノバブル生成および安定性に関するデータも得られており、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の実験を引き続き行うとともに、新たにMEMS技術を積極的に用いてナノバブルの数密度を制御する実験を行う。パターニングによって撥水部分と親水部分を形成することができ、これらの組み合わせによって界面に生じるナノバブルの状態をコントロールできると考えている。さらに、より撥水性および耐久性に優れた材料の探求も合わせて行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究における主な支出はAFMカンチレバー購入費とAFM使用料であるが、26年度については他の研究経費も合わせて使用できたため、本研究費からの支出が予定よりも低く抑えられた。これが次年度使用額が生じた主な理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
高額消耗品であるAFM用カンチレバー購入費用および共同利用のAFM使用料として使用する予定である。また、新規撥水性材料の購入費用および国際会議の参加費・旅費としても使用する。
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