本研究では,空調機の大半を占める電動の住宅用ならびに業務用の蒸気圧縮式空冷空調機を対象に,実際の運転現場において,空調機本体に追加工事や大規模な測定装置を必要とせず,実運転時の性能を簡便かつ正確に測定可能な実性能簡易評価法の開発を目的としている. 本年度は研究の最終年度として,まず,1年目に作製した空調機の各所における冷媒の温度分布測定に基づくサイクルの同定から実性能を予測する性能試験装置による基礎実験と,2年目に実施した業務用の蒸気圧縮式空調機を対象とした,実性能のフィールド測定実験から,実性能測定の課題を明らかにした.そして,この課題克服のために,冷媒循環量のその場(in situ)測定を可能とする新規な性能評価方法を考案し,その有用性を上記の試験装置により確認した.加えて,装置の実用化を目的に,大阪ヒートアイランド対策技術コンソーシアムの人工排熱低減ワーキングにおいて検討を始めた. 具体的には,空調機の運転状態を乱すことなく冷媒循環量の予測を可能とするために,ロータリ圧縮機の瞬時回転数を測定可能な3軸加速度センサーを用いた回転数測定センサーを開発した.併せて,複数の空調機メーカーに対してロータリ圧縮機の形状と1回転あたり理論押しのけ量についてのヒアリングを行い,圧縮機回転数から冷媒循環量を予測する,その場測定方法の確立を目指した.さらに,圧縮機における半径方向と上下端面における冷媒漏れ量についての理論的な検討を行った. 以上より1年目に作成した空気エンタルピー法性能試験装置を用いて,定格試験条件に近い運転環境で性能試験を実施し,提案した方法が,メーカー公表性能に最も近い性能を示すことを確認し,提案した実性能簡易評価法の有用生を実証した. また上記の研究成果を平成27年度のエネルギー・資源学会の第32回エネルギーシステム・経済・環境コンファレンスにおいて発表した.
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