研究課題/領域番号 |
25420168
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
熊野 寛之 青山学院大学, 理工学部, 准教授 (30262299)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | エマルション / 安定性 / 粒径分布 / 流動特性 / 熱伝達特性 |
研究概要 |
本研究では,水と油の混合物であるエマルションを,微細な流路内に流入させたときの,流動特性および熱伝達特性を把握することを目的としている.平成25年度は,エマルション中の分散相の大きさや組成が,エマルションの安定性にどのような影響を及ぼすかの把握を重点において検討を行った.試料には,分散相としてシリコンオイル,連続相として水を用いた.界面活性剤としては,過去の研究で十分な効果が期待できるイオン系界面活性剤を用いた.エマルションの生成方法としては,攪拌機で水を攪拌しながら,オイルを滴下していく機械的攪拌による生成方法の他,攪拌時の温度を変化させながらエマルションを生成するPIT法を用いて,エマルションを生成した.エマルションの組成としては,オイルの割合を10%から30%の範囲で変化させた.これらのエマルションに対して,エマルションが分離することなく保持されるかを確認する安定性の評価の他,顕微鏡システムでの観察,粒度分布計を用いた粒度分布計測,レオメータを用いたレオロジー特性の評価を行った. 機械的攪拌によって生成したエマルションの場合,攪拌速度が高く,攪拌時間が長くなるほど,安定性が高くなり,攪拌速度が小さく,攪拌時間が短い場合には比較的短時間でエマルションが分離してしまうことがわかった.また,PIT法で生成したエマルションでは,非常に高い安定性を示すことがわかった.粒子径分布の測定では,安定性の高いエマルションほど,平均粒子径が小さくなることがわかった.一方,安定性の低いエマルションの場合,平均粒子径が大きくなる傾向にあることがわかった.また,PIT法を用いた場合には,上昇温度によって,平均粒子径に違いが出ることもわかった.また,レオメータを用いて,レオロジー特性の評価を行ったところ,本研究で扱った範囲では,非ニュートン性を示すことはなく,概ねニュートン流体として扱えることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は,エマルションの安定性や粒子径分布などの基本的な特性を把握することを目的とした.各生成方法や各オイルの割合に対して,安定性の評価および粒子径の分布などを把握することができた.さらには,予備的な検討として,実際に配管に流入させた場合に,エマルションの組成が変化するのかを,円管に流入させながら粒径分布の測定を行った.粒子径が大きい条件では,配管に流入させた時間に応じて,徐々に粒径分布が小さくなっていくのに対し,粒子径がある大きさ以下の場合には,時間的に変化することがないこともわかった.これらの検討を踏まえて,平成26年度以降には,実際に微細流路に流した際の,圧力損失や熱伝達係数の測定を行う上での,エマルションの生成条件,組成の条件などを特定することができ,問題なく実験が遂行されるものと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度でのエマルションの基礎特性の結果を踏まえて,エマルションを微細な配管内に流入させた場合の伝熱特性について実験的に検討を行う.実験装置は,直径が1~5mm程度の水平円管で,0.5m程度の助走区間,0.5m程度の測定区間を設けたものを作成する.測定区間では,ステンレス製の円管にヒーターを巻き付けることにより,加熱し,配管内に埋め込んだ熱電対により管壁の温度計測を行い,熱伝達係数の計測を行う.さらに,圧力損失の測定も同時に行う.また,さらに微細な流路に対する検討として,矩形流路を作成し,1mm以下の隙間をもつマイクロチャネルにエマルションを流入させた場合の検討も行う予定である.
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