研究課題/領域番号 |
25420173
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 一般財団法人電力中央研究所 |
研究代表者 |
渡邊 裕章 一般財団法人電力中央研究所, エネルギー技術研究所, 上席研究員 (60371598)
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研究分担者 |
辻 博文 一般財団法人電力中央研究所, エネルギー技術研究所, 主任研究員 (40371611)
橋本 望 一般財団法人電力中央研究所, エネルギー技術研究所, 主任研究員 (70392751)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 微粉炭燃焼 / 非球形粒子運動 / 熱分解 / 詳細化学反応 / 数値解析 / レーザー計測 |
研究概要 |
微粉炭の着火プロセスを実験的に解明することを目的として,石炭供給量0.5kg/hの微粉炭噴流火炎に対してレーザー計測を実施した.具体的には,火炎内の微粉炭粒子の分散挙動を捉えるためのMie散乱光の計測,微粉炭着火時の熱分解過程において粒子から放出される揮発分の一種であり,すす前駆体でもある多環芳香族炭化水素(PAHs)のLaser-Induced Fluorescence(LIF)計測,および,すすのLaser-Induced Incandescence(LII)計測の同時計測を実施した.その結果,微粉炭噴流火炎の中心部に存在する微粉炭粒子からPAHsが放出され,その後,すすが生ずる様子を鮮明に捉えることに成功し,微粉炭火炎の内部構造の詳細が明らかとなった. 上述の微粉炭火炎構造を数値解析によって正確に捉えるため,まず始めに乱流中における微粒子の分散挙動に着目し,乱流混合層における粒子の分散,揮発に伴う相間熱物質輸送に関する直接数値計算を実施し,微粉炭燃焼の大規模数値解析では必要不可欠な代表粒子モデルの特性について明らかにした. さらに,微粉炭の着火プロセスにおける化学反応を数値解析において考慮するため,258化学種2173素反応式からなる石炭揮発分の酸化反応に関する詳細化学反応メカニズムをベースに,種々の簡略化手法を適用して,73化学種152素反応式からなる簡略化メカニズムを作成するととも,数値解析コードに導入した.本数値解析コードを用いた微粉炭噴流火炎のラージ・エディ・シミュレーションの結果から,本数値解析は,先にLIIやLIF等のレーザー計測により明らかにされた微粉炭火炎構造を良く捉えられることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微粉炭着火プロセスにおいて,最も重要な現象の一つと考えられる熱分解過程における化学反応,すなわち,揮発分の放出と輝炎の形成に繋がるすす生成の挙動をレーザー計測による実験により明らかにすることができた.また,これらの挙動を数値解析によって正確に予測することが可能な手法を確立するため,直接数値計算を実施することで,乱流中における微粒子分散の特性を明らかにするとともに,大規模数値解析に不可欠な代表粒子モデル特性の把握を行った.さらに,熱分解過程の化学反応を正確に捉えるため,詳細化学反応メカニズムに基づく簡略化メカニズムを作成するとともに,数値解析コードに組み込み,ラージ・エディ・シミュレーションを実施した.解析結果は,レーザー計測により明らかにされた火炎構造を捉えており,解析手法の妥当性を確認することができた.上述の成果により,ほぼ計画通りの進捗と考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
・0.5kg/hの微粉炭噴流火炎に加えて,5kg/hの微粉炭噴流火炎を対象とした実験的検討を進める.5kg/h規模の基礎燃焼装置は,0.5kg/hのものとは異なり,微粉炭の自燃火炎を作ることが可能であり,メタン助燃剤の影響を排除するとともに,高濃度条件における微粉炭粒子群における火炎伝播など,より実機微粉炭ボイラ内の状況に近い条件において,微粉炭の着火プロセスを観察することが可能である.この微粉炭燃焼火炎に対して,高速度カメラによる直接観察,シャドウ法による粒子分散挙動計測,LIFやLIIによる化学種やすす計測を実施し,微粉炭粒子の着火プロセスをより詳細に明らかにする. ・昨年度作成した簡略化メカニズムを用いて,0.5kg/h微粉炭噴流火炎に加えて,5kg/h微粉炭粉流火炎のラージ・エディ・シミュレーションを実施する.メタン助燃剤の影響を排除した状況において,本簡略化メカニズムにより,微粉炭の着火やその後の火炎伝播の様子を捉えることが可能かを確認し,来年度実施予定のベンチ規模や実証規模の大規模微粉炭火炎を対象とする数値解析に向けた数値モデルの検証と改良を進める.
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