研究課題/領域番号 |
25420177
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
石野 裕二 埼玉大学, 総合技術支援センター, 技師 (50645968)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 太陽光発電 / 磁気浮上 / 磁気浮上搬送装置 / 省電力 |
研究実績の概要 |
磁気浮上搬送車は軌道側に電磁石を並べる方法と,搬送車側に電磁石を搭載する方法に分けるられる.前者は原理的に完全永久非接触搬送が可能であるが,コスト的には不利である.また後者は軌道が単純な構造であり設置コストが低いという長所が,搬送車側に電力を供給する必要があるため,従来ではパンタグラフ,トロリーのように一部接触を許す給電方法,またはバッテリーを搭載し,充電するために一時的に接触給電する方法がとられてきた.本研究では後者の方法に太陽光発電とゼロパワー磁気浮上を適用し,光による非接触給電を行い,設置コストを抑え,原理的には永久完全非接触浮上が可能である磁気浮上搬送装置の開発を目的としている.これには搬送車側と地上に設置する軌道側の開発に大きく分けられ,第一年度は主に搬送車の開発を行い,第二年度は主に軌道側の開発,第三年度はそれらの改良を行う予定になっている. 搬送車は3組の磁気浮上機構及びそれらに電力を供給する電源回路によって構成される.太陽電池は,太陽光よりも低い,10klx照度環境下において300mW程度の発電電力が得られた.第一年度終了時点では定常浮上中の消費電力が発電電力を上回り,必要なすべての電力をまかなうことができなかった.これは第二年度において最少200mW以下と消費電力を抑え,完全永久非接触支持が可能な搬送装置を制作することができた.これら結果は第二年度夏に行われたISMB14にて発表を行った. この搬送装置は,10klx程度では浮上を浮上用電力のほかに,軌道上を駆動する電力を取り出すことができない.第二年度は軌道の両端をアクチュエータにより高低差を持たせ,重力とその軌道の斜面を利用し搬送車を駆動する方法を開発することを目標とした.現在これら機構の製作を終えた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開発する搬送装置は,主に搬送車側と地上に設置される軌道側に分けることができる.当初の計画では第一年度において磁気浮上搬送車側の製作を行い,第二年度において軌道側の開発・設計・製作,第三年度にこれらの改良を行うことを主な目的としていた.搬送車側は磁気浮上機構及びそれらに電源供給を行う太陽電池,電源の状態監視及び電源状態の平滑化を行う回路を搬送車側に搭載している.第一年度終了時点までにその製作を終えたが,発電電力よりも消費電力が大きくなってしまったため,第二年度初めころに低消費電力化を行い,10klx程度の照度環境において発電電力が搬送車で消費する電力を上回らせることができた. 製作した搬送装置で10klx程度の照度下における発電電力程度では,搬送車の浮上用電力のほかに,軌道上で搬送車を駆動するだけの電力を取り出すことができない.そこで軌道両端をアクチュエータにより高低差を持たせ,重力とその軌道の斜面を利用し搬送車を駆動する方法を開発することを第二年度の目標とした.アクチュエータユニットはレール両端を上下に駆動するため,リンク機構と電磁石,アクチュエータの上下動を検出する変位センサ,カウンタバランサによって構成される.レールは2mの長さのものを取り付けた.このレールにはエンコーダが取り付けられており,搬送車の軌道上の位置を取得できる構造となっている.現在までにこれらの製作を終えたが,実際に搬送車を浮上させた時にレール側が振動してしまうため,浮上が困難となっている. 現在までに搬送車側は当初の低消費電力化の目標を達成ができた.軌道側はハードウェアを制作し,現在改良中である.また当初の計画通りこれらを国際学会にて発表した.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では第三年度において,搬送車の省電力化を目指した改良と,軌道側の実際に提案方法により搬送車が駆動できるか確認し,搬送車の軌道位置に対する位置制御,荷物の搬送を目的としている.第二年度において当初目標としていた200mWという数値目標は達成できた.本年度も引き続き,搬送車側は磁気回路,構造,周辺機器,プログラミングの見直しと,必要であれば再設計製作を行い,目標以上の省電力化を狙っている. 軌道側は高低差を軌道に与え,搬送車が重力により斜面を滑り落ちることにより推進力を与えている機構を現在までに制作している.しかしながら現在では,この機構によって搬送車を浮上すると,振動が発生し浮上が困難となっている.第三年度はこの振動を除去し安定した浮上を実現させるともに,提案方法による駆動方法の確立とアクチュエータ制御用のコンピュータにプログラミングを行う. また第二年度までの結果を10th Asian Control Conference 2015(発表決定)にて発表予定である.
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