研究課題/領域番号 |
25420178
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
中村 幸紀 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90574012)
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研究分担者 |
涌井 伸二 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70334472)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 空圧式除振装置 / むだ時間 / 姿勢制御 / 運動モード / Smith法 / モード制御 / 空気ばね |
研究実績の概要 |
本研究では,むだ時間補償と姿勢制御を考慮した空圧式アクティブ除振システムを構築する.まず,半導体露光装置で搭載されている除振装置にはモード制御が施されており,同制御系に対してSmith法が実装可能であることを示した.Smith法を用いたときの除振台の回転運動を評価し,むだ時間が異なる場合においても,除振台の回転が抑制されることを実機実験により示した.本結果を国際会議IEEE/ASME AIM2014で発表した.つぎに,地震発生時における除振装置の停止方法に着目した.除振装置を停止させるため,通常は空気の強制排気により除振台の立ち下げを行う.しかし,空気ばねごとにむだ時間が異なる場合,立ち下げ時に回転運動が生じる.その対策として,目標値信号の整形を提案し,その有効性を実機実験により検証した.目標値整形により,除振台の回転角度の応答において,アンダーシュートが抑制されることを示した.同結果を国際会議IEEE ICIT2015および電気学会電子・情報・システム部門大会で発表した.最後に,空気ばねの圧力管理について検討した.産業応用の場面では,除振装置に対して圧力フィードバック制御が施されている.その際,除振装置の構造変形防止や除振台の傾斜補正のため,圧力制御系の制御帯域を拡大する必要がある.帯域拡大の一手法として,相対位置一階微分正帰還が提案されているが,むだ時間が発生したときに制御系は非因果的となるため,同手法を実装するのは困難であった.その際,Smith法を併用することで,帯域が拡大されることを示し,本結果を電気学会制御研究会で発表した.また,論文誌にも投稿しており,現在査読中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度では,まず多自由度の空圧式除振装置を停止する際,空気ばねへの圧縮空気の供給を止める実験環境を構築した.それにより,除振台停止時に産業応用の現場で採用されている強制排気を再現することができた.その際,むだ時間が異なると,除振台の回転運動が顕著に表れることを明らかにした.つぎに,目標値整形により安全に除振台を停止させる方法を提案し,実機検証により除振台の回転が抑制されることを確認した.さらに,むだ時間を含むときの空気ばねの圧力管理について検討した.前年度に用いた位置フィードバック制御に加えて,平成26年度では除振台加速度と空気ばね圧力のフィードバック制御が用いられた制御系を構築した.そして,相対位置一階微分正帰還とSmith法を併用することで,圧力制御系の帯域が拡大されることを周波数応答により実機検証した.さらに,空気ばね圧力の時間応答も評価し,帯域拡大により応答の速応性が向上したことも確認できた.これらの理由により本研究は進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度では,むだ時間を含むときの圧力制御系の帯域拡大を行った.その際,除振装置の制御系には,位置・加速度・圧力フィードバック制御を実装している.産業応用の現場では,位置と加速度の制御ループに対して,センサ信号から並進・回転運動などの運動モードを抽出するモード制御が採用されている.同制御法は,制御器のパラメータ調整の自由度が高いなどの特長をもつ.むだ時間による除振台の回転運動を抑制するため,モード制御を用いたパラメータ調整が必要になる.しかし,圧力の制御ループについては,空気ばねごとに局所フィードバックを施した独立制御が用いられている.そこで,平成27年度には,空気ばねの圧力管理に対してもモード制御を実装する.モード制御を実装することで,回転運動の抑制が改善されることをシミュレーションと実機検証により評価する.また,前年度では,地震発生時における除振台の停止方法を検討した.その際,Smith法を用いたとき,除振率(床の加速度と除振台の加速度との比率)が変化することを確認した.その対策として,平成27年度では二自由度Smith法を適用し,除振装置に対する同手法の実装上の課題とその対策を検討する.研究成果を国際・国内会議で発表し,さらに論文誌へ投稿する.
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